メガバンク、地銀、信用金庫、大手証券会社の厭戦ムード

こうしたネット証券の躍進を横目に、新NISA開始でビジネスチャンスのはずが、はやくも厭戦えんせんムードが漂うのは、メガバンクや地方銀行に信用金庫、大手証券会社といった対面ビジネスに強みを持つ既存の金融機関だ。

NISAに限らず、投信や個別株など金融商品販売では、ネット証券がその利便性や手数料の安さなどから、デジタルネイティブ世代だけでなく、30代から50代のミドル世代、そして今やシニア層に至るまで幅広い層で利用されるようになっている。店舗ネットワークと営業員を活用し、対面にて金融商品を販売してきた既存の金融機関には逆風が続いているのだ。

口座管理システムなどシステム構築と運営コストも負担となり、投信など金融商品販売の純利益がマイナスの金融機関も多々あるとみられる。

通帳と積み重ねたコイン
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リスクの高い仕組債や外貨建て保険に注力

「なぜ、わざわざメガバンクや大手証券会社でNISA口座開設や投資信託を買わなくてはいけないのか?」「SBI証券や楽天証券のほうが、早くて安くて便利で商品ラインナップも豊富ではないのか?」という利用者の素朴な疑問もある。

メガバンクや大手証券会社、地銀の証券子会社を利用しても、手数料は割高で、ネット証券のようなポイントが加算されるわけでもない。ネット証券とは違い、対面サービスに強みがあるというが、FA(資産運用アドバイザー)には当たりはずれもあり、助言や投資情報はありきたりで、商品説明や手続きも長かったりする。

大多数の既存の金融機関は、NISAの取扱いをはじめ個人向け金融商品販売においても、蚊帳の外となりつつあるのだ。

「資産所得倍増プラン」を掲げ、NISAの拡充を通じて、公的年金の代替として国民の資産形成を促したい金融庁などにとっても、「NISAは儲からない」「面倒くさい」と不平不満ばかりで消極的な一方、リスクの高い仕組債に続き、足元では、外貨建て保険などの販売に注力しては、顧客トラブルを招く既存の証券会社や銀行への不信感は根強いだろう。