全世帯から一律徴収する「放送負担金制度」の導入余地も
ことほどさように、テレビを持たない人を対象にする「ネット受信料」は、さまざまな難題を抱えている。
受信契約を義務づけられているにもかかわらず3割程度の世帯が受信料を払っていない中途半端で不公平な日本の受信料制度は、「ネット受信料」の導入を機に全面的に見直されるべきだろう。
こうした難解な方程式を解くために参考になるのが、ドイツが2013年から導入している「放送負担金制度」だ。受信機器をもっているかどうかにかかわらず全世帯から一律に一定額(年220ユーロ=約3万5000円)を徴収する仕組みだ。
これまで、日本の視聴習慣にはなじまないとしてあまり推奨されてこなかったが、いざ「ネット受信料」の徴収となった時点で、さまざまな矛盾や課題を解消するための方策として検討する余地があるのではないか、という声も出始めた。
もし導入されると、「うちにテレビはありません」「スマホは持っていません」と言っても通用しなくなる
受信料問題は、常に炎上するテーマだけに、だれもが納得する着地点を見出すのは容易ではない。NHKの経営戦略的視点ではなく、ネット視聴者の目線に立った決着が図られるように知恵を出してもらいたい。
アナログな法体系では限界だ
こうしてみてくると、「ネットの必須業務化」は決まったものの、実際に運用を始めるまでには多くのハードルがあることがわかる。
1950年に施行された放送法は、あくまで「放送」を規律するための法律で、「放送」を取り巻く環境が変わるたびに改正を重ねてきた。増改築を繰り返し、今やツギハギだらけの摩訶不思議な法律になってしまっている。
このため、「ネット」の必須業務化を規定しようとすると、少々の手直しでは済みそうにない。もはや、通信と放送が融合する時代にふさわしい法体系を検討するタイミングにきているのではないだろうか。
放送法をこねくり回すのではなく、新たにデジタルメディア法やNHK法を策定することを考えてはどうか。さらに、電気通信事業法まで含めた情報通信法制のガラガラポンまで想定しないと、デジタル時代にふさわしい適切な法規制はできないかもしれない。
壮大な話だが、急速に進展するデジタル社会は、アナログ時代の法体系では律しきれないところまできていると認識すべきだ。