被害者多発のNTTの関連会社をかたる手口

このお金はどのような詐欺の手口で集められたものなのか。多くは、「NTTの関連会社」をかたるもので、「ご利用料金の支払い確認が取れておりません」という連絡をしてくる手口でした。

参照記事:なんと病院内ATMからも…60代男性に117回振り込ませ1.6億円を奪った全カラクリ

この記事のような手口でだましとられたお金は、柴田さんのような詐欺に“全く関係のない人物”を通じて資金洗浄されていたと考えられます。

これまでの「NTTの関連会社」をかたる手口では、詐欺グループにつながる電話番号を載せたショートメッセージを送ることが多かったですが、最近は自動音声ガイダンスで電話がかかり「料金の確認」を名目に電話のボタンを押させて、オペレーター(詐欺師)につなぎ、「有料サイトなどの未払金がある」と嘘をついて、お金をだましとるケースが多くなっています。

一度、先方の話を信じてしまうと、一気にやられます。さまざまな職業を名乗った人物が電話してきます。例えば、サイバー保険会社などを装い「あなたのスマホはランサムウェアにかかっており、個人情報が流出して、多くの被害者が出ている」と言ってくる。「今日中に支払わないと裁判になる」と脅して、被害者に近くのATMから振り込みをさせます。

柴田さんによると、その詐欺被害者が詐欺グループに指示されてATM から振り込んだ先は、暗号資産の取引用アカウントに紐づいた、正規の暗号資産取引所の銀行口座でした。

被害者も振り込み先が、一般企業名(暗号資産取引所)になっていますので、まさか詐欺に遭っているとは思わなかったはずです。もちろん、正規の取引所も、そこが詐欺のアカウントとは思っていませんので、その振り込まれた金額分をアカウントに反映させます。そこからひそかに柴田さんの会社の暗号資産のアカウントに、ビットコインで送金する仕組みにしていたのです。柴田さんは、よもや自分自身が詐欺行為に巻き込まれているとは考えませんでした。

1ビットコイン(BTC)になった時に、円に換金する

柴田さんが商取引用に持っている会社の暗号資産の口座には、こうした不正に開設されたと思われる複数のアカウントから10万~20 万円分のビットコインが細かく複数回送られてきていました。それが「1BTC」になった時に円に換金して、石井らに渡していたのです。その額が500万円相当だったというわけです。

ビットコインの物理的な金属トークンとチャート
写真=iStock.com/dulezidar
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「特殊詐欺で、ビットコインの形でお金をだまし取り、送金する方法があるとは全く知りませんでした。つまり、僕自身が出し子の立場になってしまうんですよね。(詐欺グループに)はめられた感じです」

詐欺の知識のない者を狙い、手足として使うのが、犯罪グループのやり方です。驚くのは、詐欺グループの暗号資産のアカウント数です。後に警察の捜査などでわかったそうですが「犯罪者らが送金してきたアカウント数は200~300はあったようだ」といいます。