「ロシア軍はキーウ周辺に集結していた部隊に対し、意味のある補給をしなかったし、助けになることもしなかった」と、当時、国防総省報道官だったジョン・カービーは、渋滞で立ち往生した補給部隊について語った。「ウクライナ軍は非常に機敏に、橋を破壊し、先導車両を攻撃して動けなくすることで、ロシア軍輸送隊を足止めした」。

「ロシア軍に能力があったとしても、厳しい状況だった」と元陸軍大佐でオハイオ州立大学のピーター・マンスール教授(戦史)はAP通信に語った。「近代的な機甲戦を遂行することは完全に不可能であることが証明された」

■2)黒海で味わった屈辱

ロシアの陸・空・海軍は2年間の戦争で屈辱的な損害を被った。地上戦は泥沼化し、空軍はウクライナの制空権を掌握できなかった。そして、ロシアが誇る黒海艦隊は、ウクライナには対抗する海軍が存在しないというのに、その攻撃で突如、ひどい損害を被った。

黒海の港湾都市オデーサ周辺の南部海岸線にロシアの陸海空軍が一斉に攻め込むという当初の話は無に帰した。4月には、黒海艦隊の旗艦である誘導ミサイル巡洋艦「モスクワ」がウクライナの対艦ミサイルによって撃沈されるという衝撃的な事件があり、黒海艦艇はウクライナ沿岸から撤退した。

巡洋艦モスクワの沈没

乗組員510人の巡洋艦モスクワの沈没は、第二次世界大戦以降の海戦における最も大きな損失となった。これを皮切りに次々と軍艦が攻撃された。2022年の侵攻以前には、ロシアの艦隊は約80隻あったと考えられている。ウクライナは現在、大小合わせて少なくとも25隻のロシア艦を撃沈し、さらに15隻が損傷のため修理に回されたと主張している。

ロシア海軍は黒海で終始劣勢を強いられており、ウクライナの港湾封鎖を維持することができず、占領下のクリミア半島にある本拠地を守ることさえできていない。対艦ミサイル、ウクライナ製の海軍ドローン、西側諸国から供与された巡航ミサイル、コマンド部隊はいずれもロシアの防衛網を突破できることが証明されている。

モスクワの沈没は今でもロシアにとって最も手痛い損失だが、複数のロプーチャ級揚陸艦、ロストフ・ナ・ドヌー潜水艦、タランタル級ミサイル艦イヴァノヴェツも失った。クリミアの軍港都市セバストポリでは重要な乾ドックのインフラが破壊され、クリミアとロシアを結ぶケルチ海峡大橋は海軍の無人偵察機の攻撃で損傷を受けた。

セバストポリにある黒海艦隊司令部の建物でさえ、ストーム・シャドウ巡航ミサイルの攻撃で破壊された。

「どれもモスクワと同じ運命をたどるか、黒海東部に逃げてそこにとどまるまで、われわれはロシア艦船を攻撃する」と、ウクライナの元国防相で、現在は国防省顧問を務めるアンドリー・ザゴロドニュクは昨年9月本誌に語った。