日本の会社はネガティブ空間
企業がお金(利益)を生み出すには社員の結束が必要だが、その半面、社員の間には、出世を競うライバルという関係性もある。
インターネットのソーシャルコミュニティーの世界では、特定の人物が、問題発言などでほかの参加者からネガティブ評価を受けるケースがある。そうなるとコミュニティーにはいづらくなり、その人間はコミュニティーを退出、別のコミュニティーへと移る。
では会社はどうだろうか。
日本の会社は社員という共同体によって構成されている。そこでの人事は、経営者や人事部が一方的に決めるのではなく、「あいつは仕事ができる」という社員コミュニティーの評判によって決定される。上司や部下や同僚たちの評判を獲得しなければ出世できないのが、日本型の人事制度であり、日本の会社では「評判獲得ゲーム」が展開されているのだ。
この日本型人事制度では、つねに周りの目を気にしながら曖昧な基準で競争を続けることを強いられる。地位や職階で業務の分担が決まり、競争のルールが明確な米国に比べて、はるかに過酷な競争である。そのうえ、大きな成果をあげても金銭的な報酬で報われることはない。
そこで、失敗せず、恨まれず、そこそこやっていくのが、日本のビジネスマンの最適戦略になっている。
結果、日本の会社は他者を積極的にポジティブ評価することをやめ、ネガティブ評価が集まるネガティブ空間になりかねない。窮屈さは増すばかりだ。
しかし雇用が流動化していない日本では再就職の壁は厚く、会社組織からの退出は容易ではない。結果、過労死や自殺で命を失う中高年のサラリーマンが後を絶たない。企業のお金を生み出す力も弱まり、企業の成長は限定的になってしまうだろう。