親がメンタルヘルスの不調に理解がなく、本人が休職して家でゆっくり過ごしているのを「元気そうなのに、なまけているだけではないか」と誤解し、「早く復職しなさい」と背中を押していることもありますし、子どもが家計の一部を担っているので、休職が続くと経済的に困るからというケースもあります。

いずれにせよ、私が見聞きする範囲では、親が関わってくることで大きなトラブルに発展するといったケースはありませんが、これからそういったことが増える可能性はあるでしょう。

「親の介入」は悪いことばかりではない

会社も上司も、「従業員や部下の後ろには親がいる」という視点を、持っておく必要が出てきているように思います。これは、今まではあまりなかったことなので、やりにくさを感じるかもしれませんが、悪い面ばかりではありません。

最近は過労死のニュースが多いせいか、親が子どもの長時間労働を心配して、産業医や会社に連絡してくることも増えました。

ある親御さんは、子どもが毎朝早く出勤し、帰宅時間も遅いので、「うちの子は『大丈夫』と言っているけれど、本当に大丈夫なのか」と会社にこっそり相談に見えました。調べてみると、本人が申請している残業時間よりも、はるかに多い「サービス残業」が発生していたことが判明しました。それが親によって明らかになり、結果的に会社も助かったというケースでした。

このときに親が「どうしてくれるんだ」「どんな働き方をさせているんだ」と怒鳴りこんできていたり、会社の側が「余計な介入をしてこないでください」と邪険な対応をしていたら、こじれていた可能性もあります。しかしこの場合は、親の方が礼儀正しく相談に来られ、会社側も丁寧な対応をして、双方が冷静に建設的な話し合いや調査を進めることができ、勤務状況を改善できました。

本人が心身ともに疲れ切っていて、自分が「働き過ぎ」の状況にあることを自覚できていなかったり、自覚はしていても会社に言いにくいと思っている場合、こうして家族が状況に気づいて会社や医療機関、しかるべき窓口に相談することで、状況改善のきっかけになることがあるのです。

頭を抱えるビジネスマン
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