今後は日本全体が切実な人口減少期に突入します。過疎地域を集約し、医療や住まいの質を高めるコンパクトシティの実現が待たれる中、巨費を投じて、現在の被災地を細切れに復興するやり方が本当に被災者の皆さんの幸せにつながるのか、きちんと議論・検討されるべきです。

政治家は安易に「元の街に戻します」という空約束をすべきではありません。被災者は一刻も早い街の復興を望んでおられるでしょうが、そこは強烈な非難を受ける覚悟で、政治家は未来の絵図を描き出さなければならいのです。

巨額の土木予算を「生活再建」資金に!

たとえば復旧・復興のために巨額の土木予算を使うくらいなら、その分を新しい街での「生活再建」資金に充てるほうが未来につながるのではないか。「被災地を見捨てるのか」という非難の声も起きるでしょうが、多様な意見に耳を傾けつつも、10年後、20年後の能登の人々の生活を、しっかり見据えて知恵を絞ってほしい。

また昨今の国会では憲法改正議論に沸いています。戦争や大災害時など、国会が開いて法律を作る余裕のない事態に陥った場合は、政府が法律と同じ効力を発揮する政令を定めたり、国会議員の任期を延長したりできる「緊急事態条項」を憲法に追加する改憲論議がなされています。

でも、こうした論議は、僕は「ファッション化」したものだと感じています。国会議員たちは憲法を論じている自分たちの姿に酔っている、と。

というのも、どういう場合に、どのような国民の権利を、どこまで制限していいのか、という点について具体的なケースを想定した議論が完全に抜け落ちているからです。

加えて、先にも述べたように、国民の納税ルールも十分に知らず、平気で裏金をつくり、最後は自分で責任を取らずに、秘書の責任にする。こんな無責任極まりない国会議員たちに法律の縛りのない強権を与えてもいいのかと、強烈な不安感を覚えます。

会議で資料を読むスーツの男
写真=iStock.com/Semen Salivanchuk
※写真はイメージです

いきなり抽象的に憲法の緊急事態条項を論じるのではなく、まずは今回の2次避難その他、いざというときに国民の皆さんにどのような強制力を発動しなければならないのか、そこをしっかりと考えて法律を作るべきです。そのような法律を作る能力のない国会議員が憲法改正などできるわけないし、仮に有事になったときに、緊急事態条項を乱用する危険性が高くなる。

コロナ禍では対処するために必要な法律を次々と成立させてきましたが、今回の震災をきっかけに、様々な有事の具体的なケースを想定しながら政治行政が適切に動くための法律をしっかりと作り、そして最後にどうしても事前に想定しえない場合に備えて、憲法上の緊急事態条項を作る議論に入る。これがファッションではなく、真に日本の国において必要な憲法改正論議だと思います。

(構成=三浦愛美 撮影=的野弘路)
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