具体的なフレーズを学ぶ前に、マークは「大前提として、教科書に載っているフレーズや表現はもちろん間違いではないのですが、ネーティブには違和感を抱かせてしまうケースがあります」と言う。

「基本的に教科書英語はどちらかというと堅い表現が使われています。そのまま使うと正確なニュアンスが伝わらない可能性があります」

【図表】教科書には書いてあるけど日常ではほぼ使わないワード9選

続けて、英検3級レベルの英語で、普段から外国人との意思疎通に奮闘するユーダイも、こうアドバイスする。

「英語は日本語に比べてボキャブラリーが少ないので、必要不可欠になるのがジェスチャーや表情です。外国人はボディランゲージが豊かで、話し相手の喜怒哀楽に敏感なので、日本人が仏頂面で教科書英語を使うと、堅苦しい印象を持たれてしまいます。だから僕はギャグやユーモアを交じえて会話しています。例えばYouTubeの動画内では『Hey Mark, what’s your name?』というフレーズを毎回使います。これは直訳すると『へい、マーク、あなたの名前はなんだい?』。英語がうまく喋れないことを逆手に取り、あえて馬鹿なふりをすることで、親近感が生まれ、一気に距離が縮まります」

英会話に必要なのは砕けたスタンス

ジェスチャーや表情にも、より有効な使い方がある。

「感情や気分を正確に表す便利なフレーズもあります。それが『It was like〜+ジェスチャーや表情』です。『It was like〜』は『〜のような気分』という意味で、そこに続く感情をジェスチャーや表情で代用するんです。一例を挙げると、仕事で大きなミスをした後、同僚と話しているときに、『It was like〜+ため息のジェスチャー』で、『ため息をつくような気分さ』と意味が通る。『Sad』や『Happy』など感情を表現する単語もありますが、感情の波の大きさやニュアンスまでは言語化しにくいので、僕自身もかなりこの表現は重宝しています」(マーク)

コミュニケーションに必要なのは、なにも言語だけではない。表情、ジェスチャー、気の利いたシャレなど、あらゆる手段を織り交ぜていくのがベストだという。

「イギリスで放送されている伝統的な自動車番組では、車をほめるときに『She is hot.』と言うんです。本来なら女性をほめるときに使う表現ですが、あえて車に当てはめるんです。車だけでなく船を『She』と呼んだりもします」(マーク)

日本でいう擬人化を用いることで、洒落たニュアンスが生まれるのだ。

「外国人は、その場の文脈で意味を意訳したり、皮肉めいたジョークを言うのも日常茶飯事です。例えばレストランに行ったとき、出てきた料理が微妙だったら、少し眉をひそめながら『This dish is lovely.(これは最高の一品だね)』と言ったりします。少し上級者向けのテクニックかもしれませんが、『イギリス人はネガティブなことも、あえてポジティブに表現する』と把握しておくだけでも、会話がすれ違いにならないと思います」(マーク)

英語を喋るには、単語や文法を正確に使わないと通じないという先入観がある。しかし2人のアドバイスを聞くと、英語で会話するために必要なのは砕けたスタンスであり、むしろネーティブもシャレや身振り手振りを織り交ぜながら話すのが自然なようだ。