国内では内需増加が見込めない
一方、日本製鉄は内需増加が見込めない日本国内では脱炭素投資がむずかしいことを課題に挙げました。
2022年度のROEが12.7%でPBRが約0.7倍のINPEXは2023年8月10日の決算説明資料で、PBRは上昇傾向にあるものの足元は0.5倍台と割安だとする一方、ネットゼロ5分野において、風力発電、地熱発電等の再エネ事業を推進するとともに、水素事業やメタネーションの具体化を進めることで、エネルギートランスフォーメーションを強力に進めていると述べました。
資源関連企業はカーボンニュートラルに向けた投資と株主還元のバランスが必要になります。
ウクライナ戦争で懐疑的な見方も
東亞合成は2023年8月9日の決算説明資料で、2027年ROE8%&PBR1倍以上を目指す施策に、非財務戦略として、持続的な成長を支える人財育成とサステナビリティの実現を盛り込みました。
2025年のGHG(温室効果ガス)排出量を2013年比で35%削減し、報酬・退職金の向上などインセンティブ付与による成長と分配の好循環を実現するとしました。
ウクライナ戦争に伴うエネルギー価格の高騰が世界的にESG投資に対する懐疑的な見方を強めました。
その傾向は米国でとくに強まった一方、欧州では宗教的にESGを信じるアセット・オーナーやマネージャーが依然多数存在します。
「ESGという言葉はもう使わない」
米国ではESGファンドの残高が、目に見える形で減り始めています。米国大企業の役員報酬は巨額ですが、業績や株価が芳しくないのに、サステナビリティのKPIに結び付けて役員報酬を意図的に上げているとの批判も出ました。
日本は欧米のあいだの立場でしょうが、日本でもESGへの関心の低下を示すアンケート結果が発表されました。国内の市場関係者に対するアンケート調査である「QUICK月次調査2023年9月号」は、ESGに関する質問を行ないました。
ブラックロックのフィンク会長が「ESGという言葉はもう使わない」と発言し、株主提案への賛成も下がっていることをどうみるかに関する問いに対する市場関係者の回答としては、「ESG投資の効果を測ること自体が困難であり、限界が見えてきた」が最も多くなりました。
「日本でのESG等について、市場参加者は今後どのように受け止めていくと思うか」という問いに対しては、「E、S、Gを分けて考えるようになる」が39%と最も多かったのですが、「関心は徐々に落ちていく」との回答が22%と、「重要度はさらに増していく」との回答の8%を大きく上回りました。