マツダ、ワコールも社長交代

PBRが約0.6倍のマツダでは5年ぶりの社長交代が行なわれました。

マツダは2023年8月10日に発表したコーポレートガバナンス報告書で、「資本コストや株価を意識した経営の重要性は認識しており、中期経営計画に指標を掲げている」と述べました。

PBRが約0.9倍のワコールHDは2023年6月に社長に就任した矢島昌明取締役が、決算説明会で「収益性向上と同時に、資産効率、資本効率を改善させることでROEを向上する。成長投資を優先すると同時に、資本効率の改善に向けて積極的に株主還元を実施する」と明言しました。

【図表】2023年に社長交代が発表されたPBR1倍割れ企業
出典=『低PBR株の逆襲

ESGに対する関心が低下

人材投資の強化は成長期待の高まりにつながるので、PBR=ROE×PERの方程式に基づいて、PBRを向上させると期待されますが、4月以降に発表された低PBR対策で、サステナビリティ経営や人材投資の強化は投資家の評価が低かった印象です。

ウクライナ戦争以降の資源高によって、ESGに対する関心が世界的に低下したことや、6月有報から人的資本の開示が始まったものの、投資に直接的に役立つ情報開示ではないことが関係しているでしょう。

ESGに対する関心が低下
写真=iStock.com/Ratana21
ESGに対する関心が低下(※写真はイメージです)

ユニバーサルオーナー(巨額の資産を持ち、幅広い資産や証券に分散投資を行なっている長期投資家)であるGPIFは、運用業界におけるESG普及に向けて様々な努力をしていますが、ESGと企業価値の関連性について確立した手法がないことが影響しているでしょう。

投資家は短期的には資本政策の見直し、中期的には事業ポートフォリオの見直しに注目しているといえます。ただ、素材産業でカーボンニュートラルが中長期的に業績にネガティブに働くとみられているなど、業種による違いは多少あります。

また、人材投資が長期的に生産性向上や従業員エンゲージメントの強化につながれば企業の競争力が高まるので、長期的にPBRを高めることにつながる可能性はあります。