ロシア化教育に反対する人々は拷問、弾圧されている

支配地区では戒厳令が導入され、住民へのロシア国籍付与、ロシア語教育、通貨ルーブルの流通、法律導入など強引な「ロシア化政策」が導入された。一方で、反露分子の拉致・拷問や反露デモの弾圧が行われ、パルチザン活動が続くなど治安はよくない。戦火による破壊、労働力不足など占領地の経済は停滞している。

5期目は戦場で支配地区を拡大しながら、連邦予算を投入して復興を図り、完全統合を目指す意向のようだ。

一方、ロシアは2030年までに隣国のベラルーシを統合し、吸収することを狙っていることを示す内部文書が昨年2月、国際ジャーナリスト連合によって暴露され、ドイツ紙などで報じられた。

「ベラルーシでの戦略目標」と題した17ページの機密文書は、クレムリンの「内部戦略文書」とされ、2030年までにベラルーシを政治・軍事、経済、文化の3部門で統合し、「連邦国家」を創設するとしている。

文書は政治・軍事分野で、ロシア軍のベラルーシ駐留を段階的に増やし、統合司令部を設置。外交・国防政策もロシアが管轄する。経済面では、ルーブルによる単一通貨、関税・税制の統一、発電システムの統合を行う。文化面でもロシア化教育を浸透させるとしている。米政府高官はこの文書について、「ロシアの最終目標はベラルーシの完全編入だ」と指摘した。

“弟分”のルカシェンコ政権のうちに併合に踏み切るか

ロシア、ベラルーシ両国は1999年に将来の統合をうたった「国家連合条約」を締結している。当初はベラルーシのルカシェンコ大統領が病弱なエリツィン大統領に代わってロシアを牛耳ろうとしたが、2000年にプーチン政権が登場すると攻守交代し、プーチン氏が条約を盾に統合を主張。ルカシェンコ大統領はこれを懸命にかわしてきた。ロシアと統合すれば、国家元首から「州知事」に転落するためだ。

しかし、2020年の大統領選の不正で大規模な反政府デモが起きると、ルカシェンコ氏はロシアに支援を求めてかろうじて政権を維持。ロシアに頭が上がらなくなった。ロシアは昨年、戦術核兵器をベラルーシに配備するなど、軍事面での統合を確実に進めている。

ベラルーシは面積20万平方キロで、人口約900万人。ソ連崩壊で初めて独立したが、文化的、歴史的、経済的にロシアに近く、ロシア語が主流だ。産業に乏しく経済規模はロシアの4%。農村部や高齢者はロシアへの帰属意識が強いが、若者や都市部住民はロシアより欧州連合(EU)との統合を望むようだ。

ルカシェンコ後に親欧米政権が誕生すれば、ロシアにとって悪夢であり、併合を急ぐかもしれない。ベラルーシの軍、情報機関など暴力装置はロシアと関係が深く、一方的な併合も不可能ではない。