岸田政権の「リーダーシップ不在」が円安を招いた
植田総裁の前任者、黒田東彦氏の時代の方が、日銀のメッセージはわかりやすかった。黒田氏はデフレ脱却のため、あらゆる手段を使って金融緩和する、と言い続けていました。
もし黒田氏が日銀総裁を続けていたら、今の過度な円安を放置することはなかったのではないでしょうか。少なくともそう思わせるくらい、黒田氏にはリーダーシップが感じられました。
安倍元首相も経済運営への明確な姿勢とリーダーシップを持っていました。世論の動向に敏感な安倍氏が今も政権の座にあれば、すぐにアメリカへ飛んで根回しして、為替介入をしていたのではないでしょうか。
一方の岸田首相はまるで存在感がありません。
投機筋はこういう状況を狙ってきます。過度な円安が続いているのは、岸田首相のリーダーシップ不足の影響もあるでしょう。
誰も円安を止めようとしていない
繰り返しになりますが、円安が絶対に問題というわけではなく、行き過ぎていることが問題なのです。
1ドル=130円程度の水準であれば、インバウンドも伸びるし、内需への悪影響もある程度抑えられていたでしょう。
本来そういう水準で為替を安定させるのが政権と金融当局の仕事です。
なのに政治にはリーダーシップが欠けており、金融当局は機動的な政策運営ができず、市場とのコミュニケーションにも失敗しています。
また、円安の弊害や金融当局の姿勢をマスコミが追及しないのも問題です。
こうした理由で、日本では責任をもって為替相場を安定させようと行動する人が不在になっています。そのせいで過度な円安になり、物価が上がり、国民の生活が苦しくなってしまうのです。
目下の日本経済は好調で、インフレ期待もあいまって、日経平均はさらに上、4万円台を目指すことも考えられます。
しかし、政権が円安を放置し内需が冷え、景気が減速する懸念や、アメリカの景気後退の可能性も踏まえると、日経平均が2万5000円くらいに下がる可能性も見ておくべきでしょう。