「ユネスコ無形文化遺産」登録を狙う動き
書道人口が減っている中で、書道界に新たな動きが見られます。
文化財保護法が改正され、歴史上または芸術上の価値の高い「わざ」を持つ無形文化財に、「登録」という新しい制度が誕生し、2021年12月、「書道」と「伝統的酒造り」が初の「登録無形文化財」として登録されました。
さらに、国の文化審議会は2023年12月18日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)無形文化遺産の候補に「書道」を選定し、2026年の登録を目指すと決定しました。
文化庁は書道を「筆、墨、硯、紙などの用具用材を用いて、漢字、仮名、漢字仮名交じりの書、または篆刻(てんこく。篆書体の文字を石や木などにハンコとして刻むこと)として、伝統的な筆遣いや技法の下に、手書きする文字表現の行為」と定義しました。
筆、墨、硯、紙は文房四宝と呼ばれ、用具用材に対する理解を深めることで、書という芸術を高めてきた歴史があります。
文字を書く機会が減り、書道人口が減少している昨今、ユネスコ無形文化遺産に登録されることにより、書道を見直すきっかけになれば、との思惑があります。
書道界の旧弊は世界から嘲笑されてしまう
11年前の2013年に「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されて、出汁を重んじる和食が注目され、海外での日本食ブームを後押しし、「食育」が世の中に広まりました。書道が海外でも広まり、訪日外国人観光客が書道体験イベントに参加するなどのブームを期待しているのかもしれません。
しかし、ユネスコ無形文化遺産に書道が登録された後で、書道界の審査の不正、長老支配、金権体質が明らかになったら、世界から嘲笑されるでしょう。
書道界の不正審査問題で、日展第三者委員会の委員長を務めた濱田邦夫氏は、以下のように総括しています。
美や芸術の世界は、作家や鑑賞者たちに「生きる歓び」を与えるものである。また「金と権力が成功のあかし」といった世俗社会から超越したもの、と一般社会は期待している。残念ながら、我々の調査の結果、日展第5科書の在り方はこの一般社会の期待を裏切っているのではないか、という疑念を晴らすことができなかった。この疑念は第5科だけに限定されるものではなく、日展の他の科についても程度の差はあれ、潜在していると思われた。また公益社団法人として、日展の運営体制については改善の余地があると思われた。