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売上高、営業利益

12年3月期の富士フイルムの売上高は2兆1953億円、営業利益は1129億円。では、先程の約3分の2の営業利益を稼ぎ出していた写真フィルムを含む感光材の不足分をどう補ったのか。それは写真フィルム市場の減少を予測し、フィルムの研究開発など現場で培った技術を基に横展開した“多角化の妙”にある。デジタルカメラなどの「デジタルイメージング」、医療診断機器や医薬品などの「ヘルスケア」、液晶フィルムなどの「高機能材料」、携帯電話のカメラモジュールなどの「光学デバイス」、子会社の富士ゼロックスが手掛ける「ドキュメント」「グラフィックシステム」など、今後の成長が見込まれる6つの事業領域へ大胆な転換を図ったことだ。その中でも、「ヘルスケア」「高機能材料」「ドキュメント」を成長戦略の中の“3本の柱”と位置付ける。

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6つの重点事業分野のうち、3つの分野に経営資源を集中

具体的に10年来の営業利益の減少分を補ったのは、01年に、合弁会社から株式を取得して75%に出資比率を上げ、売上高1兆円規模の「富士ゼロックス」を連結子会社化したこと。05年度から06年度にかけて写真事業に関わる部門の約5000人、09年度から10年度にかけて間接部門、研究開発部門等の約5000人と、2度の大規模なリストラを敢行したことも大きな要因だ。

「痛みを伴う改革」と同時に、“新領域”に、大胆に経営資源を投下してきたことも大きい。例えば、化粧品やサプリメントの「予防分野」、超音波診断装置や内視鏡などの「診断分野」、医薬品などの「治療分野」という医療の3領域を網羅した「総合ヘルスケア企業」への脱皮を目指している点だ。そして、18年度には、同分野の売上高を現在の約3倍の1兆円に引き上げる計画を掲げている。具体的に富士フイルムの改革の現場の事例を見ていきたい。