現実世界と魔法世界が共存する

『ハリー・ポッター』シリーズは紛れもなくファンタジー映画である。ファンタジーは大きく『ハリー・ポッター』タイプと『ロード・オブ・ザ・リング』タイプの2つに分けることができる。

前者は、イギリスのゴシック文学やドイツ幻想文学の流れの中にある現実世界と幻想(あるいは恐怖)、魔法などが交錯するファンタジー。そして後者は、神話やホメロスの『オデュッセイア』や『イーリアス』の流れの中にあり、完全に新たな世界を設定しヘテロセクシャル的英雄譚が描かれる叙事詩ファンタジーである。

『ハリー・ポッター』のストーリーの主軸は次のようなものである。

「魔法使いであるハリー・ポッターは1歳の時に両親を亡くし、ロンドンに住む母の姉夫婦に酷い扱いをされながら育てられるが10歳(ほど)の時、ホグワーツ魔法魔術学校への入学許可の知らせが届き入学。そこでロン、ハーマイオニーらと共に魔法を学び、両親を死にいたらしめた闇の魔法使いヴォルデモートとの戦いを描いた物語」である。

そのホグワーツ行きの列車が出るのがロンドンのキングス・クロス駅の9と3分の4番線である。世界観としてはロンドンも実在、キングス・クロス駅も実在のものである。つまり『ハリー・ポッター』は現実世界から魔法世界へ移動し両世界とも存在する。

ロンドンのキングスクロス駅のプラットフォーム9と4分の3
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ハイブリッド型ファンタジー

しかし『ハリー・ポッター』は物語が進んでいくとヴォルデモートの存在が大きくなり、ハリーとヴォルデモートの戦いがメインの叙事詩ファンタジー、ヘテロセクシャル的物語の色合いが濃くなる。いわば、ハイブリッド型のファンタジーである。

第1作目からハリーの額に傷があり、これがヴォルデモートと戦う宿命の証しとなっている。『ハリー・ポッター』は最初から、ハイブリッド型が想定されて作られていたのだ。

ハイブリッド型というと優れているような響きがあるが、必ずしもそうとは言えないのではないか、という疑問も残る。今までもファンタジーのハイブリッド型はいくつも存在する。

ミヒャエル・エンデ原作の『果てしない物語』(映画化作品は『ネバー・エンディング・ストーリー』)は代表的な例と言える。『ネバー・エンディング・ストーリー』に比べると、『ハリー・ポッター』はかなりシンプルに現実世界から魔法世界への移動型と英雄譚をミックスしている。この構造を頭に入れた上で、『ハリー・ポッター』のアイテム、魔法、モンスター、人物キャラクター、世界観について考えてみたい。