「姑息=卑怯」の誤用は時代劇が原因?

姑息

本当の意味
しばらくの間、息をつくこと。根本的な解決をせずに、場当たり的に物事をすること。その場のがれ。

正しい使い方
ビル工事の騒音を、耳栓という姑息な手段でやり過ごすしかなかった。

誤用
彼は勝ったが、そのやり口は実に姑息なものだった。

「姑息なやつめ」というのは時代劇における定番の台詞ですが、ここで卑怯といった意味合いで用いられたことが、誤用が広がった理由の一つかもしれません。「姑息」という言葉の中に入っている「息」とは、吸って吐く呼吸のこと。ほんの短いこの一息が「息をつく」ということですから、この「息」という字から「一息つく=短く一時的なもの・その場限り」と覚えるとよいでしょう。

余談ですが、私は呼吸法の研究をしていたことがあります。「息」とは面白いもので、吸っているときは命が高揚し、吐いていくと次第に心が静かになって、吐き終わったわずか一瞬、静かな空白ともいえる瞬間が訪れる――。私はこの“軽い死”とも思える瞬間を「出止しゅっし」と名づけ、「出止」の瞬間を見つめることこそが悟りへの道へ繋がると考えました。

今、呼吸に焦点を当て“今この瞬間”を感じる「マインドフルネス」が流行っていますが、私の呼吸法研究と共通する部分が大きいように感じます。