日本コカ・コーラが販売していた「太陽のマテ茶」は初年度1000万ケースを超える大ヒット商品だった。だが、現在の日本では売られていない。元日本コカ・コーラ最高マーケティング責任者の和佐高志さんは「2年目、3年目と売り上げを落としていった。その背景には日本のマーケットに『トクホ』が登場したことがある」という――。

※本稿は、和佐高志『メガヒットが連発する 殻を破る思考法』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。

明洞
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マテ茶を意味あるものに作り上げる「MMMプロジェクト」

「太陽のマテ茶」のコンセプトを、どんなブランドにしてマーケティングするか。ビッグプロジェクトだったため、日本の大手広告代理店、外資系の広告代理店、数社にコンペでの提案をお願いしました。

通常は、お願いするときは1社ずつブリーフィングを行うのですが、このときは全社同時に来てもらいました。お茶のトップの私、それから健康茶のブランドマネジャー、さらに担当ブランドマネジャーの3人に加え、社内のクリエイティブ戦略チームも加わりました。

お茶の可能性、「太陽のマテ茶」のミッション、ビジネス機会、ポジショニング、東日本大震災の話、南米のサッカーの話など、さまざまな話を盛り込みました。

通常、ブリーフィングは2、3ページのドキュメントにコンセプトシートを付けることが一般的ですが、商品化まで3年もかかったこともあって、社内のクリエイティブ戦略チームもかなり気合いが入っていて、イメージ写真なども使った分厚いブリーフィングシートを作りました。

これからマテ茶というものを、何か意味あるものに作り上げていくという「MMM(Make MATE Matter)プロジェクト」と命名しました。製品ローンチは2012年3月です。

初年度で約3億本を売り上げた

そして1社から素晴らしいアイデアが上がってきました。テーマは“ラテンバイオリズム”。食べる、遊ぶ、マテ茶。食べる、遊ぶ、マテ茶。そんなバイオリズムを作っていく、というのはどうか、と。面白いと思いました。

「太陽のマテ茶」導入当時は、「ラテンバイオリズム編」「合コン編」「失恋編」の3本のテレビCMを展開することにしました。

製品導入のPRイベントのときには、「踊るサンバ」をキーワードに郷ひろみさんに登場いただいたり、ブラジル人やいろいろなセレブリティに来てもらったりもしました。

2012年、飲料業界では2つのメガヒット商品が生まれました。一つはサントリーの「オランジーナ」。そして、もう一つが日本コカ・コーラの「太陽のマテ茶」でした。

初年度、「太陽のマテ茶」は約1200万ケースを売ったのです。1ケース24本入りとして、約3億本。初年度で1000万ケースを売るというのは、とんでもないことでした。しかし、それを達成したのです。まさにいろいろな要素が加わって、大きなトレンドを生み出すことができたのでした。