相続放棄が増え続ける背景にも空き家の存在
現在、空き家を所有する人の世代は65~74歳が41%と最も多い。解決に向けて動かないままこの世を去れば、空き家は子ども世代に相続される。寄せられたお便りでは「どうしていいかわからないから、申し訳ないが子どもに解決してもらいたい」「今住んでいる家は空き家になるが、自分が死んだら子どもになんとかしてもらうしかない」と考えている人もいた。
どうにもならない空き家を相続したとき、取りうる最終手段として相続放棄という道はある。最高裁判所が発表する司法統計年報によると相続放棄の申述の受理件数は増加傾向にあり、2008〜2018年の10年間で約1.5倍になっている。メディアでこの件が取り上げられる際には空き家をはじめとする“負動産”を背負い込むことへの忌避感が理由として語られる。
先送りが子孫の人間関係を壊す可能性もある
本来の相続人が相続放棄をすると別の人間が相続人となる。たとえば両親が亡くなった後、子どもたちが全員相続を放棄し、両親の親つまり祖父母もすでに他界していた場合、相続権は親の兄弟姉妹に移る。彼らもすでに亡くなっていたときにはその子ども、相続放棄をした人間にとってのいとこが相続することになる。
実の子どもたちが「いらない」と断った空き家を親族が喜んで受け取ることは稀だろう。押し付け合いの果てに、遺された者たちの人間関係に大きなひびが入りかねない。
「いずれ誰かが解決してくれる」「いったん置いておこう」と、空き家所有者あるいはこれから空き家になりうる家の所有者たちが先送りにしたツケが、次世代に大きな重荷を背負わせる。子どもが亡き親を恨みがましく思うようなことすらあり得てしまうのだ。