日本が出遅れたのは「すり合わせ技術」のせい
SDV車が持つ3つのコネクティビティとは、
① 新しいソフトウェアをダウンロードするたびに自動車の性能が向上する
② 走行中の車の運転データをビッグデータとして吸い上げることができる。そのデータを、たとえば自動運転のAIの機械学習に活用することでAIがますます賢くなる
③ 同じく吸い上げたビッグデータは、次世代の新型車開発に活用される。具体的には部品性能の見直し、走行性能のハードウェア的な向上、そしてコストダウンへと活かされるというものです。
日本車がSDV機能で出遅れた理由は、日本車の最大の強みである、「すり合わせ技術」にあります。
たとえば、トヨタ車はトヨタが単独で開発しているわけではありません。新車を開発する際は、ティア1と呼ばれる協力会社が集まって開発チームを編成します。昭和の時代は1次下請けと呼んでいたのですが、今は協力会社と呼ぶようになっていて、各分野で日本を代表する会社からそれぞれ優秀なエンジニアが集まって、新車開発のプロジェクトを立ち上げます。
新車はガソリン車の場合、実に2万5000点もの部品を組み上げてつくられています。コンパクトが売りの日本車の場合、それらを車体やエンジンルーム、インパネなどそれぞれの場所に正確に組み込めるよう、幕の内弁当を作り上げるよりもはるかに緻密な計算の元、設計されています。
エンジン車と同じやり方では非効率になってしまう
そんな繊細な車づくりをするためには、各社の技術と設計をすり合わせたうえで、それぞれが担当する領域を切り分け、主要部品を開発していく必要があります。重さやバランスの少しのズレも許されないような世界なので、「ここを数グラム軽い部品に変えよう」とか「ここを数センチだけズラして」といった形で、最後はミリ単位まですり合わせて設計されています。
ここが日本車の開発チームの強みなのですが、SDVの時代になってこれが「弱み」に変わってしまいます。なぜなら、各協力会社がそれぞれ担当している部品を設計しているがゆえに、それらをコントロールする半導体部品も同様に、独自にかつ大量に組み込まれてしまうからです。
パソコンやスマホのCPU(中央演算装置)に相当する自動車の半導体として、ECU(Electronic Control Unit=エンジンの働きを総合的に制御するマイクロコントローラー)があります。日本車の場合、各協力会社が各部品をバラバラにつくり、最終的に1つにまとめるという方法をとっているので、このECUも各部品に独自に組み込まれています。
そのため、協力会社が数十社もある場合、ECUが1台に20~30個も搭載されてしまうことになるのです。つまり、バラバラのECUがそれぞれ違う主要部品を制御している状態です。