日本企業が受け皿になるチャンスが到来している
今後、半導体など先端分野での米中対立はさらに熱を帯びそうだ。2024年11月に大統領選挙を控える中、米国は対中禁輸措置などを強化し、中国の半導体製造能力の向上を抑えようとするだろう。中国はそれを跳ね返そうと産業政策などをさらに強化するはずだ。
そうした変化は、わが国の半導体産業が復活を目指す追い風になる可能性もある。中国への製造技術への流出を阻止するため、米国はTSMCなど台湾企業にも連携強化を求めるだろう。地政学リスクへの対応で、半導体製造拠点の地理的分散も加速するだろう。台湾から主要先進国などへの半導体供給は鈍化する可能性がある。
受け皿として、汎用型の半導体製造、半導体製造装置、関連部材メーカーが集積するわが国の重要性は高まる。2023年11月、熊本県にTSMCが第3工場を建設し、回路線幅3ナノメートルのチップ製造を検討していると報じられた。総事業費は3兆円に達する。背景には、事業環境の変化に対応する狙いがありそうだ。
日本は早急に最新のチップ製造を実現せよ
そこにわが国の半導体産業が復活を実現するチャンスはある。それは、わが国経済の実力である潜在成長率の回復にも大きく影響する。関連企業に必要なのは、常に新しい(高付加価値の)半導体製造技術の実現に取り組む姿勢だ。
足許の世界経済では、車載用半導体の供給過剰懸念が高まった。一方、AIの利用増加に欠かせないGPUの供給は、今のところ需要に追い付いていない。メモリー分野では“広帯域幅メモリー(HBM)”と呼ばれるデータ転送速度が高い、新型のDRAMチップの需要が増加し徐々に市況底打ちの兆しが出た。
今後、もし米国の景気減速が鮮明となれば、一時的に半導体市況が軟化する恐れはある。そうした逆風に対応しつつ、わが国の半導体産業界は最新のチップ製造技術の実現を目指す必要がある。そうした機運の上昇は、わが国の経済の成長力を回復することに寄与するはずだ。