弟がいる長女vs妹がいる長女

研究が進んでいるのは、デンマークです。デンマークの研究で注目しているのは、第1子が女の子(長女)である場合です。ここで第2子が男の子(弟)なのか、それとも女の子(妹)なのかによって、長女のその後の人生に変化が生じるのか、という点が検証されています。

長女・長男という組み合わせや長女・次女という組み合わせは日本でもよく見かけますが、この二つのパターンでどのような違いが生じるのでしょうか。

秋の公園を、小さな弟を連れて走り出すお姉ちゃん
写真=iStock.com/skynesher
※写真はイメージです

この点を分析したのがチューリッヒ大学のアン・アルディラ・ブレノエ助教です(*3)。この研究では1980~2016年のデンマーク政府の行政データを使用しており、なんと、デンマークの全国民を分析対象としています。といっても、デンマークは全人口約586万人の比較的小さな国であるため、最終的な分析対象となった長女のサンプルは、約10万人でした。

なお、日本に住んでいるとデンマークはあまりなじみのない国なのですが、ドイツの真上、スウェーデンの横に位置する国で、国土も小さく、日本の約9分の1の大きさです。ただ日本よりも男女間格差が小さく、男女間格差の大きさを指標化した世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数では23位(2023年)となっています。ちなみに、2023年の日本の順位は、125位でした。デンマークは日本よりもだいぶ男女格差が小さい国だと言えるでしょう。

学業や職業選択に違いが出てくる

さて、このデンマークのデータを用いた分析の結果、何がわかったのでしょうか。ブレノエ助教の分析によれば、弟がいる長女と妹がいる長女では学業、仕事、家族面で違いが見られることがわかったのです。

まず学業面については、弟がいる長女の場合ほど、STEM(科学・技術・工学・数学)の分野を専攻する割合が約7.4%低くなっていました。弟がいる長女ほど、理工系よりも、文系を学ぶ割合が高いと言えます。

続いて仕事面ですが、妹がいる長女と比較して、弟がいる長女の場合ほど、職場における男性比率が約1.2%低く、STEMの分野で働く割合が約7.3%低くなっていました。つまり、弟がいる長女ほど、成長後に働く職場の男性比率や、理工・数学系の分野で働く割合が低くなっていたのです。

また、長女にパートナーがいる場合、そのパートナーの働く職種における女性比率も、弟がいる長女の場合ほど約2%低くなっていました。弟がいる長女のパートナーほど、女性比率が低い職場、逆を言えば、男性比率のやや高い職場で働く傾向があったのです。