途中駅から乗車する人が座れない問題

設定列車を絞った分、利用率が上がっている格好だが、ニーズがあることは間違いない。JR東海は「利用状況に応じて設定列車を決定しており、今後の本数を増やす、減らすという明確な方針はない」と説明するが、利用の回復とともにトラブルは増えかねない。安心して利用できる環境整備の努力はこれからも進めてほしい。

そして目玉の「のぞみ」全車指定席化だが、そのねらいについてJR東海は、「3大ピーク期(GW、夏休み、年末年始)は指定席が早い段階で満席になり、着席ニーズが増している」こと、「品川や新横浜など始発駅以外から乗車する場合、自由席は着席や(超満員で)乗車ができないことがあるため途中駅利用者の着席機会を増やす」とユーザーメリットを強調する。

JR東海は2020年3月から「のぞみ」を1時間あたり最大12本運行できる体制を整えており、ピークとなる28日~31日下りは午前中を中心に多くの時間帯で12本を設定して、過去最大規模の輸送力を確保した。

26日12時現在の指定席空席情報をみると、ピークの29日・30日はほとんどの列車が満席だが、早朝、夕方以降にはまだ若干の空席があり、前後の28日・31日は余裕がある。十分な座席を提供できるという自信が全車両指定席化の背景にあるのだろう。

「混雑率200%」の自由席をなくすのは必然だった

自由席特急料金と指定席特急料金(繁忙期)は、東京―新大阪間で1050円の価格差があり、自由席利用者から「値上げ」との声もあるが、実のところ「値上げ」もねらいのひとつなのは間違いない。

というのも東海道・山陽・九州新幹線は、2023年4月からシーズン別の指定席特急料金を繁忙期(+200円)・通常期・閑散期(-200円)の3段階から、最繁忙期(+400円)・繁忙期(同)・通常期・閑散期(同)の4段階に改めた。

以前は、年末年始はすべて繁忙期にするなどざっくりとした設定だったが、今年から帰省ラッシュの12月29日・30日とUターンラッシュの1月3日・4日を最繁忙期、前後を繁忙期、それ以外を通常期とするメリハリをつけた設定として混雑緩和を図る。そうなると需要をコントロールできない自由席の存在は大きな障害となるので、全席指定席化は必然だったといえるだろう。

前述のように現時点では自由席特急券で立席乗車が可能だが、将来的にはJR東日本の新幹線「はやぶさ」「かがやき」で行っているように、列車ごとに限られた枚数の「立席特急券」を発売する形態に移行するかもしれない。

※東海道新幹線にはエクスプレス予約、スマートEXなど会員向けの指定席特急料金割引サービスがあるが、利用が帰省などに限られる人には縁遠いのと、通常の切符と利用条件が異なる点もあるため本稿では省く。

これらの新たな取り組みが示すのは、これまで指定席が収容しきれない乗客を自由席に押し込み、最大で200%もの混雑と引き換えに需要を満たしていた営業形態を、充分な座席の供給を前提として、需要をコントロールする方針に転換したということだ。