ネクタイはスーツの傍に…は思い込み
ここでは、2つのケースを紹介しながら、定位置の決め方の例をご紹介します。
ケース1 出勤前にはなぜか必ず寝室に戻る夫…
Kさんのお宅では、ご主人が朝、出勤前に寝室でスーツを着て、リビングでくつろいでいるのに、出かける直前に、必ず寝室に戻ってから出勤するということに気づいたそうです。
観察していると、どうやらご主人は、出かける直前に寝室にネクタイを取りに戻って、リビングにある大きな姿見の前でネクタイをつけていたようです。おそらく出かける直前に、その日の気分に合ったネクタイをつけて出て行きたい、ということなんでしょうね。
でも、せっかくリビングでくつろいでいたにもかかわらず、出勤前にバタバタと寝室に戻るのは効率の良い行動とはいえませんよね。では、そのお宅ではどうしたか。リビングの姿見のすぐ近くに、ネクタイを置くスペースを作ったそうです。スーツとネクタイを一緒に置いておかなければならない、というのは思い込みなんですね。
誰のモノなのか、誰が使っているのか。そして、どう使いたいのか。モノの定位置を決めるには、使う人の視点に立って考えることが大切なんです。使う人の不便を解消してあげる、ということが定位置を決める目的であり、結果なのでしょうね。
ケース2 キッチンにごちゃつく小物を放置する夫
Tさんのお宅では、ご主人がご自分の持ちモノをすべてリビングに置くので困っていました。スマホ、小銭入れ、キーケース、携帯……、それらをリビングに隣接するキッチンカウンターにバラバラと置いておくご主人。リビングには生活感をあまり持ち込みたくない、という奥様にはそれが気になって仕方がありません。
でも、ご主人にとって、必要なモノを置きたいのは、キッチンカウンターであり、そこが定位置なわけです。生活動線から見ても、そこに置くのがベスト。そこで、奥様にご提案したのは、ご主人が置いておきたいモノを全てまとめて置けるレザープレートをキッチンカウンターに置いてはどうか、ということでした。
キッチンカウンターにバラバラと置いておくと、確かに見栄えが悪い。だから、そこには置いてほしくない……、奥様はそのように思い込んでいました。でも、見栄えの悪さをフォローできる、素敵なレザープレートを一つ置くことで、奥様の不満は解決できたようです。
なお、全ての場合においてWIN-WINになるわけではありません。家族と生活する上で大切なのは折り合いをつけること。自分の考えを押し付けてもダメですし、家族のやりたいことを全て受け止めようとすると、今度は自分に負荷がかかります。「絶対にこうでないといけない」という思い込みを捨て、妥協点を見つけて、みんなが心地よく過ごせるようにすることが大切なんですね。
使い勝手の良さを優先し、柔軟にモノの位置を決めよう