ネット関連業務の変化を痛感

一方、話を冒頭の新規業務に戻すと、私がウェブ関連の仕事から離れていた間に、さまざまな変化が起きたと感じる。ネットに掲載される広告記事も3年ほど前とはつくりが異なってきているし、言葉づかいの規定や〈「……」ではなく「…」〉といった表記の統一ルールなど、ライター向けマニュアルが完璧に決められていたりする。3年前は「まぁ、ある程度は決めておくけど、そこまで厳密でなくていいか」みたいな空気感だった。というか、私自身が編集の責任者だったため、チャランポランな性格もあって厳密に決めていなかったのだ。しかし、いまは敏腕の若者がこうした仕組みをバシッとつくっている。

広告記事を出したいクライアントも、私は耳にしたことがないようなベンチャー的な会社が多い。若く、ギラギラした彼らも、事業を拡大しようと広告を発注してくれているのだろう。そうした仕事に私は下請けとして参加し、執筆した匿名記事が世に出るようになるわけで、なんというか「急に世界が変わってしまった」感覚だ。さらに、しばらく遠ざかっていた仕事上のストレスも受け入れなくてはならない。とはいえ、これはどんな職業人にも付いて回ることだから、うまく消化していくしかない。

モラトリアムは心地よい。しかし…

ここ3年ほど「気心の知れた相手とだけ仕事をする」ことに徹していたのだが、「相手が何を求めているのか、明確に把握する」「クライアントや制作陣の要求するレベルを察して、適確にアウトプットする」姿勢が求められることになった。

いや、なんのことはない。セミリタイア前までは、それが日常的なルーティンだったのだ。新しい仕事相手との付き合いが始まると、まずは探り探りで作業を進めてチェックを受け、指摘を踏まえて修正をする。そんな繰り返しは、1997年に仕事を始めてから23年ほど、ずっとやり続けてきた。

だが、唐津に移り住んでから、すっかりその手の仕事から離れてしまった。加えて、東京で忙殺されていたころには想像もできなかったような、仕事以外の時間を存分に謳歌する生き方を知り、その心地よさにドップリと浸ってしまった。正直、金銭面での不安はまったくないため、今後も変わらず「のんき暮らし」を続けたところで、とくに支障はない。

しかしながら、新たな仕事によって現実に少しだけ引き戻されたいま、「この3年、自分は夢を見ていたのでは」と冷静に振り返る気持ちが強くなっている。同時に「現在50歳。そろそろ現実に戻るか……」といった感覚も抱き始めている。奇しくも1年間を振り返る時期に本稿を書いており、フェイスブック上の知り合いも1年を振り返るような投稿をするなかで、「はてさて、自分はどうするか?」を少し真面目に考える2023年末を迎えている。