同様に私道にだけ面した土地の場合、私道の通行や私道内の水道管などの掘削工事を無償承諾する「私道の通行掘削承諾書」を、私道の所有者全員から取得しないと売り物になりません。また、実家が借地であるケースの場合も同様で、地主さんの承諾が無ければ、借地上の実家は売却することも建て替えることもできないという事情から、地主さんとの良好な関係が土地の価値を左右します。

このように不動産の価値は他人との関係にも影響を受ける場合があることが分かりましたが、相続税評価額にはこれらが反映されないという落とし穴があるのです。

「実家の価値」を自分で計算することはできるか

とはいえ、そのような事情は抜きとして、実家の価値が知りたいと考えた時、ザックリと計算することはできます。

方法としては、インターネットで近隣の不動産の取引事例(国土交通省:土地総合情報システム)や相続税路線価(国税庁:路線価図)で土地のm2単価が簡単に分かりますので、m2単価に土地の面積を掛ければザックリと土地価格の目安が分かります。

住宅街
写真=iStock.com/Orthosie
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しかし、相続の際に不動産をどのように分けるのか、相続税の納税用の売却候補地の選定など相続税対策を検討する場合、必ず不動産業者に相談することをお勧めします。繰り返しますが、相続税評価額や上記のようなザックリとした目安額には、各不動産が抱える前述の問題点を反映し切れていないという落とし穴があるからです。

通常であれば、相続税評価額よりも高く売却できることが多いのですが、前述したような問題を抱えている場合、評価額を下回ってしまう場合もあり、高額な相続税を支払うための納税用に駐車場を準備していたのに、隣との境界確定ができず、想定した金額で売却できなくて困ったという例も実際にあるのです。実際にいくらで売れるのは、相続税評価額とは別の問題なのです。

都内の木造3階建てを相続する場合は…

具体的にイメージしていただくために、私のところに相談に来たAさん(30代女性)の実家を例に相続について考えていきましょう。

・東京都調布市の住宅地にある築11年の木造3階建て
・宅地面積170m2、延べ床面積140m2
・住んでいるのは両親のみで、子供3人は別居

もしAさんの父親が亡くなった場合、母親が実家の土地建物を相続することに兄弟姉妹に異論はないそうで、また、相続税も小規模宅地等の特例が使えそうなので、相続税の納税も必要なさそうです。さて、その後の母親からの相続(二次相続)の時のほうがトラブルになる可能性があるので、Aさん家族に二次相続が生じた場合の相続税を考えてみましょう。