世界を“放浪”しながらも、会社員時代の倍以上の収入を得る30代女性がいる。現在、世界4週目の旅をスタートさせたばかり。両親の影響で質素倹約に励み、会社員時代はがっちり貯金。会社員を辞めてからは、前職の仕事、投資、デジタルノマドとしての経験の講演などを収入源にした。「極力自分のしたいことだけで収入を得ていきたい」と語るライフスタイルの極意をフリーランスライターの東野りかさんが聞いた――。
南アフリカでは民族衣装に身を包んで
写真=Akinaさん提供
南アフリカでは民族衣装に身を包んで

10年後には10億人に増大⁈ 高収入のデジタルノマド

「これから世界4週目の旅に出ます」とにこやかに笑うのは、CoCoという会社のCEOを務めるAkinaさん(35)。こう聞くと自分探しの旅をする令和のバックパッカーかと思うが、そうではない。今世界中で急激に増えつつあるデジタルノマド(Digital Nomad)であり、そのライフスタイルをポッドキャストなどで発信(ノマドユニバーシティ)して“稼ぐ手段”の一つとしている。

ノマドユニバーシティ

そもそもデジタルノマドとは何者か

ノマドはフランス語が語源で“遊牧民”を表す。日本では「ワーケーション」がコロナ禍に定着したが、それの進化系と考えてもいい。単なるワーク(仕事)とバケーション(休暇)の融合ではなく、生き方そのものが新しいスタイルだ。

彼らはエンジニア、ウェブデザイナー、起業家などITを中心とした高度なスキルを持つプロフェッショナルワーカーであり、Wi-Fiが完備された場所であれば、世界中どこでもパソコン一つ持って働きながら暮らすことができる。

遊牧民というと、貧しい流浪の民を思い浮かべる人もいるが、現在のノマドは相当に知的で洗練されている上、収入が多い。デジタルノマドの平均月収額は、日本円にして約78万円(税引き前)で、日本人の平均月収額の約2倍。本人は、多い月で100万円以上の収入になることもあるという。一方、1カ月の生活費は約23万円。昼食のコストは1900円。さらに1カ所の滞在期間が1カ月以上と長めだ(以上、日本デジタルノマド協会集計のデータによる)。

このようにデジタルノマドは比較的高収入で可処分所得が高い。そして滞在期間が長めなので、単なる観光客よりも滞在国に及ぼす経済効果は大きい。

しかもプロフェッショナルなスキルを持っているので、ローカルの雇用を奪う心配がない。それゆえ世界各国でも彼らを呼び込もうとチェコ、ドイツ、アイスランド、スペイン、インドネシア、タイなどでデジタルノマドビザを発給している(類似ビザを含む)。

韓国も2024年頭にビザの発給を開始予定で、日本も発給に向けた法制度を整備中だ。現在、世界のデジタルノマド人口は約3000万人だが、10年後には10億人にもなるとも予想されている(※出典:levels.io

そんなデジタルノマドを標榜する日本人として、Akinaさんは脚光を浴び、自分の経験を冒頭の通りポッドキャストや、日本国内だけでなく世界中のデジタルノマド向けの国際イベントやプログラムなどで、基調講演のスピーカーとして招待されている。

「海外のデジタルノマドのコミュニティで暮らしながら、その経験を国内外で発信している人は、私以外日本ではいません。ニッチ・オブ・ニッチな存在になれたのはラッキーでした」

つまり、現状、彼女の競合はいない。究極のブルーオーシャンだ。