花園天皇の著作『誡太子書』への言及

さて、ここまで昭和天皇について述べたうえで気になるのが、昭和天皇の孫にあたられる今上陛下が、昨今の「政治とカネ」を巡る騒ぎを目の当たりにされてどうお感じになっているのかということである。

第7回アフリカ開発会議に臨席した陛下
第7回アフリカ開発会議に臨席した陛下(写真=TICAD7 Photographs/CC-Zero/Wikimedia Commons)

昭和天皇は「東宮御学問所」という特別な教育機関でお学びになったが、戦後生まれの今上陛下は際立って特別な帝王教育をお受けになったわけではない。それでも、漢籍を典拠に「徳仁」とご命名されたことの影響もおありなのだろうか、しばしば徳について触れられている。その代表例が花園天皇の著作『誡太子書かいたいしのしょ』へのご言及だ。

「『誡太子書』においては、まず徳を積むことの大切さを説かれ、そのためには道義や礼儀も含めた意味での学問をしなければならないと説いておられます。このような歴代の天皇の思いに、深く心を動かされました。私は、過去に天皇の書き残された宸翰などから得られる教えを、天皇としての責務を果たしていく上での道標の一つとして大切にしたいと考えています」――令和4(2022年)年2月21日、お誕生日に際せられて。

いわゆる「保守政治家」こそ襟を正すべき

これは文脈上、過去の天皇のように国民に寄り添いたいというお気持ちを表現なさったにすぎないけれども、もしかしたら陛下も昭和天皇をはじめとする歴代天皇と同様のお考えを実は持っていらっしゃるのかもしれない。

いや、否定する材料は特にないのだから、皇室の長い歴史と伝統の継承者という立場上そうお考えになっているとみなしておこう。そのほうがいわゆる「保守政治家」たちを戒めるためにはよいであろうから。

今は亡き安倍元首相がそうであったように、安倍派には皇位継承について強いこだわりを持つ者が多い。筆者は彼らと同じく男系男子による皇位継承を尊重する立場から「旧宮家」の皇籍復帰を支持しているが、今はただただ「皇室を大事に思う心があるのならば、まずは天皇陛下を悩まし奉ることのないように襟を正せ」と思うばかりである。

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