ダメだと思いながらも変えられない

――日本は失われた20年、30年と言われる長い不況の中にあります。日本の企業が元気になる方法を、相模屋さんの経験から導けないでしょうか?

【鳥越】私はおとうふのことしか分かりませんけれど(笑)。ただ、救済した会社の経営層の人たちと話すと「誰かにそれを言ってもらいたかったんだな」というのは、すごく感じますね。

――それ、というのは。

【鳥越】「やっぱり今のままではダメだな」と自分でもうっすら思いながらも、一緒にやってきた社員、幹部の人たちに、「俺のやってきたことは間違っていた、ここから転換する」と言うのは、なかなか難しいじゃないですか。転換したい方針が正しい、という確信を持てないし、言ってまた失敗したらどうしよう、と考えてしまう。

私たち相模屋は、とにかく前に突き進んで、手痛い失敗もしています。けれど、ある程度実績を持っているから、確実に……もちろん世の中に確実なことはないかもしれないんですけど、「大丈夫、これでいけます、こうしましょう」とある程度自信を持って言えるんですね。そういうふうに相模屋の人間に言われることで、「実は自分もそう思っていたんですけれど」という言葉が返ってくることがよくあるんです。皆さん、実は分かっている。だけど、それを言うことができない。他人に言うほどの自信が持てない。

日本が陥っている「だめだめスパイラル」

【鳥越】そもそも経営者に対して「それでいいんだよ」と言ってくれる人って、なかなかいないですからね。自信が持てないときに何かに1回躓いてしまうと、自分のやっていることがすべてダメなような気がしてくるじゃないですか。

だめだめスパイラルが回ってしまって、「これが正しい」と言い切れない。言い切れないので周りのやる人たちも、覚悟を決めることができない。そうするとやることが中途半端になります。中途半端なものが成功するわけもなく、またダメだった、となり、「次もきっとダメだ」という気分が自分も社内も覆っていく。