離婚は成立、高額な学費は認められず

依頼を受けて離婚調停を進めると、妻は財産分与や養育費に加えて、インターナショナルスクールの学費、年間数百万円を請求してきました。A夫さんは、「妻とはやっていける気がしないので離婚はやむを得ない」という気持ちでした。しかし、高額な学費はとても負担できないし、娘のことは心配なので、せめて頻繁に会えるようにしたいという要望がありました。

もちろん離婚をしても、養育費とは別に将来の学費の負担を求めることはできます。しかし、両親の学歴と対応した範囲での、適正額での負担になります。そのため、妻の側がいくらインターナショナルスクールの学費まで請求しても、調停や裁判でその金額が認められることはありません。

結局、将来の学費は適正額で支払うということで合意できました。A夫さんは離婚して、娘とは定期的に面会交流をするようになりました。

こうしてA夫さん夫妻は離婚しました。

離婚または別れたカップルのお金のイメージ
写真=iStock.com/Sayuri Inoue
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高額教材にハマる妻の背景にあるコンプレックス

妻が幼児教育にはまりこみ、高額な教材を買うという事例は、離婚の相談によくあります。

昔は百科事典、子ども用パソコン、知育セット、今は英語教材、早期英才教育……。その時代ごとに教材の流行はありますが、妻が幼児教育に大金をつぎ込み、夫婦げんかになるというのは、実は近年に限らず、普遍的な夫婦問題なのです。

こういった妻の心理として大きいのは、自分の学歴や地位へのコンプレックスです。特に、努力して勉強をした経験のない人が、子どもが生まれた時に漠然と「頭のいい子に育てたい」と考えて、のめりこんでしまう傾向があります。

しかし、頭が良い子に育てたいと思っていても、自分が熱心に勉強をしたことがないので、子どもにどんな勉強をさせたらよいのか、妻自身もよくわかっていません。そのため、「日々努力する」という地道な方法に思い至らず、SNSなどで見かけた「これを使えば簡単に賢くなる」という話に飛びついてしまいます。また、優秀な人の能力は努力のたまものであるということがわからず、何かすることでいきなり天才児が育つという考えも持っています。