ようやく政治が動き始めた
ようやく政治が動き出したのは今年10月に入ってのことだ。
10月18日、自民党は交通安全対策特別委員会に「危険運転致死傷のあり方検討PT(プロジェクトチーム)」を発足。まず政府から現状について説明を聞き、11月15日には被害者遺族と被害者支援弁護士からヒアリング。さらに11月末には刑法学者をはじめとする有識者の意見を聞いて取りまとめた上、12月には政府等への申し入れを検討しているという。
座長は、11年前に眞野さんの事故を内閣委員会で取り上げ、警察庁や法務省を厳しく追及した平沢勝栄衆院議員だ。
そして、眞野さんは今、危険運転の問題だけでなく、ある目標に向かって取り組んでいるという。
「私自身、息子の事故から奈落の底に落ち、心は再起不能で、今でも悲しい気持ちは全く変わりません。しかし、事故直後から悲しみに浸る余裕もないまま、国から受けるさまざまな理不尽に直面し、苦しんできました。北欧のスウェーデンやノルウェーには犯罪被害者庁というものがあり、国としての被害者支援が充実しています。たとえば、賠償能力のない加害者に代わって、国が被害者への賠償金を立て替える制度があるのです。私は日本にも被害者庁を作り、犯罪被害者に手を差し伸べるべきだと思っています。そして、この先の人生、それにかけようと思っています。私は、この世で一番大切なものをなくしたので、もう怖いものはありません」
国家による二次被害を生み出さないために
眞野さんは、次の被害者遺族が自分たちのように苦しい思いをしないでほしいという。そのためにも、まずは悪質な運転による事故を「危険運転」として真っ当に裁き、同種事案を防ぐための抑止につなげていくことが重要ではないだろうか。
遺族の怒りの声や苦しみから生まれた「危険運転致死傷罪」が遺族を苦しめる法律になっている現状がある。これを今すぐ改善するべきだ。眞野さんをはじめとする多くの被害者遺族の思いを背負った「危険運転致死傷のあり方検討PT」の動きに注目していきたい。