EVシフトは世界的なメガトレンドであるため、いずれの国でもEVは普及が進む方向にある。トルコでも高所得者層を中心にEVの購入に前向きなカーユーザーは一定数いるはずで、そうした人々を中心に、高金利でもEVが売れているのだろう。それにトルコのEV普及はまだまだ遅れているため、その意味で「伸びしろ」が大きいことも確かだ。
こうして考えると、トルコでもEVの普及は今後進んでいくだろうが、それが今後10年足らずで新車の3割に達するかというと、そう簡単ではないのではないと考えられる。
換物需要に牽引される乗用車
そもそも、トルコの金利水準は極めて高い。60%を超えるインフレが続いているため、トルコ中銀は11月23日の会合で、政策金利を5%ポイント引き上げ、年40%としたばかりである。では、このような高インフレ・高金利の国で、いったいなぜ、新車が飛ぶように売れているのだろうか。最大の要因は、換物需要にあると考えていい。
一般的に、トルコのような高インフレやハイパーインフレを経験した中進国では、通貨に対する信認が弱いため、インフレ耐性が強固な貴金属や不動産、そして自動車への需要(換物需要)が強い。半導体の供給が増えたこともさることながら、60%超の高インフレで換物需要が強まったことが、今年のトルコの新車市場の好調につながっている。
自動車であれば資産価値が保たれる
そして、トルコやアルゼンチン、ロシアのような高インフレで換物需要が強い国では、中古車市場が発展している。インフレが加速しても、自動車は中古車市場で相応の高価格で取引されるため、自動車の資産価値は担保されるわけだ。中古車市場が発展しているからこそ、新車市場もまた好調を維持できるという関係は極めて重要である。
しかし現状だと、ガソリン車やディーゼル車と異なり、中古EVはバッテリーが劣化しているため、新車に比べるとかなり割り引かれて取引される。とはいえバッテリーを交換すると、今度は新車と中古車の間でEVの価格に差がなくなり、市場で取引が成立しない恐れが大きくなる。中古車価格は低過ぎても高過ぎても不適当なのである。