アメリカとイギリスの自警団に共通するのは、地域の名士が安価で迅速な安全確保のメカニズムを創出するため設立した点と、社会変動期に出現した点である。ただし、社会変動が空間的形態を取ったアメリカでは、辺境の開発による刑事司法の機能不全が背景にあったが、社会変動が構造的形態を取ったイギリスでは、産業化と都市化による刑事司法の機能低下が背景にあった。

さらに、アメリカの自警団が、しばしば法が許す範囲から逸脱したのに対し、イギリスの自警団は、法に対する執着を保持し続けた。もちろん、イギリスでも、自警団の暴走がなかったわけではないが、アメリカに比べれば、低いレベルだった。イギリスの自警団が警察と協調的なのは、イギリスが近代警察発祥の地であるという歴史が影響している。

アメリカもイギリスを追随

そもそも、安全確保活動(policing)という単語は、政治形態(polity)、政治学(politics)、政策(policy)と同じ語源、すなわち、ギリシャ語の市民政体(polis)から派生した語である。したがって、安全確保活動は、国家の法的機能というよりも、むしろ市民社会の政治的機能に関連するものだ。

そのため、安全確保活動を国家機関が独占的に演じる役割と考える必然性はない。実際、警察(police)という単語も、18世紀になって、秩序維持という特定の機能を指すものとして使用され始め、まもなく特定の職員を明示するものとして限定的に用いられるようになった。したがって、それ以前、つまり、警察という語が現在のように用いられる前には、民営の安全確保活動が重要な役割を演じていたわけだ。

それはともかく、アメリカも国家として成熟するとともに、イギリスのように、自警団が警察と協働するようになった。というのは、地域社会は、自警団より警察力の増強を望んでいたからだ。地域にとって自警団は、法が許す範囲から逸脱したり、不適格な者の参加を認めたりする組織に映っていたのである。

協調的な自警団として代表的な組織は、1979年にニューヨークで創設された「ガーディアン・エンジェルス」だ。日本でも、1996年に日本ガーディアン・エンジェルスが設立されている。

前述したように、日本の自警団は、町内会といった伝統的な住民組織を基盤にし、特定の地域社会において活動している。対照的に、ガーディアン・エンジェルスは、近代的な市民活動団体として、特定の地域社会を越えて活動している。