「無意味な仕事」がまん延した根本原因

加えて無駄で無意味な仕事は、本来やるべき仕事の能率を著しく下げ、成果を損ないます。成果が上がらなければ、人件費の削減を目的とする「成果主義賃金制度」によって、賃金を据え置かれるか、減らされてしまうでしょう。そうなればやる気はいっそうくじかれてしまいます。

頭を抱えているビジネスマン
写真=iStock.com/mapo
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さらに言えば、無駄で無意味な仕事が常態化している会社や職場では、日々の仕事に幸福や楽しさを感じることもないでしょう。これもまた日本企業の活力を削ぎ、社員のやる気を失わせる一因になっています。

ではなぜ社員のやる気をくじくような「無意味な仕事」「どうでもいい仕事」がここまで日本企業にまん延してしまったのでしょうか。なぜかくも改善の兆しが見えないのでしょうか。この問いについても、結論を先に言いましょう。原因はマネジメントに問題があるからです。「無意味な仕事」「どうでもいい仕事」のまん延は、経営陣や上司の属人的な欠陥や無能ぶりに起因するのではなく、誤ったマネジメントに深く根差しているのです。

「マイクロマネジメント」の問題点

では誤ったマネジメントとは何でしょうか。

それは経営陣や上司が、社員に対してやることなすことに報告を求め、細かい指示を出す、過剰な社員管理です。マイクロマネジメントとも言います。大企業を中心に、多くの日本企業ではこれが組織的に行われているので、社員は些末な仕事の予定調和的な実行を指図され、行動を監視され、上司への確認や報告に忙殺されているのです。

私の取材ノートにはマイクロマネジメントの事例もいくつか記されています。消費財メーカーに勤める30代の社員は、商品の販促イベントを企画・展開するプロジェクトに加わった際、プロジェクトリーダーがことあるごとに上司から報告を求められ、企画についてダメ出しされたり、「こうしろ」「ああしろ」と細かく指示されたりするのをはたで見ていて暗い気持ちになったと話してくれました。

「プロジェクトリーダーは毎日のように部長に報告を求められ、会議室で1時間ほど部長との面談の時間を費やさせられていました。面談が終わるとプロジェクトリーダーは私たちを集めて、例えば『イベントを告知するチラシやポスターの文字色の赤みを少し強めろと言われた』などと部長の指示を伝達するんです。何のためのプロジェクトリーダーなのかわかりません。任せられないのなら、部長がすべて仕切ればいいと思うんですが、具体的な作業はあくまでプロジェクトリーダーにやらせるんですよね」