妨害事件を反省し、強引な体質を改善させた

もちろん、出版妨害はよろしくなかったが、藤原氏の書籍の内容も、今日なら名誉毀損きそんで訴えられたら苦しいだろう。また、選挙直前の出版は、選挙妨害だという批判もあったし、現在では藤原氏と公安関係者の格別に密接な関係が指摘されており、藤原氏が「正義の味方」というわけではない。

だが、池田氏は非を認めて謝罪し、公明党との政教分離を徹底した。公明党を創立して創価学会と組織を分けたこと自体が政教分離のためだから、この事件で政教分離に追い込まれたというのは正しくないが、この時期に、池田が組織拡大のためなら強引さが許されがちだった創価学会や公明党の体質を思い切って改めたことは、長い目で見て賢明だった。

同時に、他宗教を「邪教」と言わないとか、会員が生活に困窮するような無理な資金協力をさせないようにするといった配慮が徹底されている。

拙著『日本の政治「解体新書」 世襲・反日・宗教・利権、与野党のアキレス腱』(小学館新書)や、「『日本一選挙に強い宗教団体』はどうなるのか…創価学会が直面している『時代の変化』という大問題」という記事でも論じた通り、会員は聖教新聞を購読し、年に一人1万円程度の財務を銀行口座に振り込むのが標準だが、生活保護受給者などは払わなくてもいいことになっている。経済的負担が小さいのも、創価学会が成長し、勢力を維持している理由のひとつだ。

政教分離で批判していた自民党と手を結ぶ

池田氏は政界でも存在感を発揮した。田中角栄氏と日中国交回復で協力しつつも、社公民路線を基調とし、その延長で細川連立政権に参加したり、新進党の結党に加わったりした。

この時期、旧統一教会問題から目をそらす目的もあったようにも見えるが、自民党が政教分離をネタに創価学会を攻撃し、創価学会が犯罪に絡んでいるとか、池田氏が愛人を国会議員にしたといった週刊誌報道を機関誌「自由新報」に転載したりした。

しかし、この週刊誌報道は裁判で完敗し、窮地に立った自民党が全面謝罪したことが、2000年に公明党が政権参加する道を開いた。政治的な窮地を巧みに前進につなげていったのは、池田氏の手腕に拠るところが大きい。