「グレー」を「無礼」と聞き間違えて…
この野田教授を取材した静岡新聞記者が11月9日の会見で、「当時の金子社長が補償する発言をしたということについて、国土交通省は目的外使用に当たらないと言っていて、(知事は)無礼であるとおっしゃった。無礼であるのは、これは誰が誰に対して、無礼とおっしゃるのか」と、あまりにも“無礼”な質問をした。
どこをどう調べても、川勝知事は「グレー」と言っただけで、「無礼」などとは言っていない。しかし、何と川勝知事は「国交省の見解に対して無礼である」と答えてしまった。
さらに、「電源立地交付金が減ることをJR東海が補償することは水利権の目的外使用に当たるととらえているのか」と記者が何度も繰り返すと、川勝知事は「目的外使用に当たる可能性があるのではないか。目的外使用ではないと国交省が言っているが、その理屈が通るのか、素人にはちょっとすっと落ちない」と逃げてしまった。
この記者は「JR東海が取水抑制をお願いした分を金銭的に東電に補償する行為についても目的外使用に当たると、知事の理屈があると思う」とJR東海の費用負担が目的外使用になることに、知事の同意を強引に求めた。
しかし、川勝知事は「断定していない。懸念がある」と回答し、その後同席した天野朗彦・経営管理部参事(法務担当)の助言をうながした。天野氏は静岡県の法務担当責任者である。
田代ダム案に反対しているのは川勝知事ただ一人
天野氏は、2023年7月27日付静岡新聞の記事を挙げて、「大学の先生(野田教授)が、その対価を支払うと、水利権の売買に当たる可能性があると言っている」だけと述べた上で、「国交省が当事者になるので、そこで法的な判断をしてもらえばいい」と回答した。
記者は「田代ダム案が提案された県専門部会で議論のするのが筋だ」などと不満を述べると、天野氏は「国交省が水利権を所管している。法的な問題は当然しっかり国土交通省がチェックしてもらい、適法なものが出てくる」と回答していた。
川勝知事、記者ともに河川法と発電用施設地域周辺整備法の違いも区別できず、特に河川法を全く理解できていない。単に田代ダム案をつぶすことに躍起になっているだけだ。
ことし3月27日の大井川利水関係協議会で、静岡県吉田町の田村典彦町長が「田代ダムの取水抑制を行った場合、発電に影響ないと東京電力は言っているのか? もし、発電に影響がないならば(取水抑制を)ずっとやってもらっても問題ないのでは」と、東京電力の今後の水利権に影響するような疑問を投げ掛けた。
これに対して、JR東海は「(田代ダム案は)東京電力の発電に影響が及ぶ。発電量は減ることになるが、東京電力にリニア工事のためにひと肌脱いでもらう。そのための経済的な補償をする」などと回答した。
10月26日、この件を田村町長に確認すると、田村町長は「田代ダム案に賛成だ。水利権の主張などしない」と答えた。
これで大井川流域の首長たち全員が、田代ダム案が東電RPの水利権に影響を与えないことを確認している。残るは、川勝知事のみである。
田代ダム案で、最大の懸案だった大井川の水環境問題が解決すれば、静岡工区着工への道筋ははっきりと見える。しかし、底の割れた「茶番劇」はまだまだ続くのかもしれない。