岸田政権が大型の経済対策を発表した。財源となる補正予算はかなりの規模になると予想され、解散も取り沙汰されている。今回、発表された経済対策は、やり方第ではそれなりの効果を発揮する可能性もあるが、項目を事務的に列挙しただけとの印象が拭えず、世論の受け止めは厳しい。
最も欠落しているのは、どのように景気を拡大させ賃金を上げていくのかというストーリーである。では、今回の発表のどこがいけなかったのだろうか。
岸田文雄首相が9月25日に発表した経済対策の5本柱の中身は、①物価対策(ガソリン代補助など)、②リスキリングなど持続的賃上げ、③工場の国内投資促進、④人口減少対策(デジタル化)、⑤国土強靱化となっている。これに加え、社会保険の加入によって労働者の手取りが減少する、いわゆる「年収の壁」への対応策や、賃上げ税制などが含まれている。
最大の問題は、これらがどのように賃上げや景気拡大につながるのかという道筋が見えないことである。岸田氏は「冷温経済」から「適温経済へ」といったキャッチフレーズを掲げたが、相変わらず抽象的で、正直、何を言っているのかよく分からない。
もっとも、列挙された各項目をよく見ると、重要と思われる施策も少なくない。経済政策には、短期的なものと中・長期的なもの、需要サイド(消費者)に効くものと、供給サイド(企業)に効くもの、という2つの評価軸がある。この2軸を中心に、成長のストーリーを組み合わせることで、実効性と説得力が格段に増してくる。
論理的ストーリーを展開すべきだった
例えば今回の対策については「設備投資倍増から賃金の上昇へ」といった具体的なキャッチフレーズを示し、税制改正や生産拠点の国内回帰支援策(③に相当)によって企業に設備投資を促し、これによって今後の成長と賃上げを実現するという論理的ストーリーを展開すべきだった。