お年玉を通じて子供は大人や社会を知る

さらに10歳前後から発達が完成し始めるのは、社会生活を円滑に行うための高度な機能がつまった「こころの脳」、すなわち前頭葉です。ペアレンティング・トレーニングではここでも肝要なのは「家庭生活」であると説いています。

そもそも、皆さんが勤め先の利益につながる働き(物を売る、信用を得る等)をしたから、勤め先に収入が入り、その収入からあなたへの報酬が発生しています。ですからいつもいつも自分のやりたいように仕事ができるわけではありません。

意にそぐわない作業をする時期だってあるでしょう。けれどもそれが最終的に会社における「信用を得る」「物が売れる」ことにつながる。これが「社会生活」そのものです。

このように社会の中で「うまく」人間関係を構築して、仕事を遂行している大人がいて、初めて子どもたちはお年玉をもらえる、ということを考えれば、それを子どもの脳にしっかりと継承していくことが、親の重要な役目であることが理解できると思います。

家族
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「ありがとう」「ごめんなさい」が行きかう家庭がいい

社会は子どもの目に見えている世界だけではありません。彼らが大人になったとき、「社会でうまくやっていく」ための練習を社会の最小単位である家庭生活で行っていきましょう。

大人は、相手によりいろんな程度の人間関係の維持を行っています。旅行に一緒に行く、ご飯を食べに行く、だけが関係をもつ手段ではありません。会った時の挨拶だったり、子どもがおやつをいただいたお礼の電話も、見知らぬ人が落とした書類を拾って手渡すことも、人間関係の一つです。

助けてほしいと言ったわけではなくても結果的に助けられた時にはお礼を言います。迷惑をかけてしまったら「ごめんなさい」と声に出します。感謝の気持ちは、今度はその人を気遣う気持ちになります。家庭で子どもに親がその姿を見せ続けることが大事です。

「おかげさまで」「ごめんなさい」「ありがとう」という言葉が常に行きかう家庭生活の中で、子どもの社会性、すなわち前頭葉の高度な働きである「こころの脳」が育っていきます。

お年玉の金額は子供の成長に関係ない

おわかりいただけたでしょうか。お年玉とはこのように「親の社会生活・人間関係」の「おかげさまで」子どもに与えられる金銭なのです。「あげる・あげない」「いくらあげる」といったマニュアルの話ではありません。

それによってご家庭で「どのように子どもの脳を育てるか」が最も重要なポイントです。

先のご家庭のように「なぜこのお金をあなたがもらえているか」という話をするのはもちろん大事なことなのですが、「ありがとう」を誰に、どのように子どもが伝えるかということも、脳育ての観点からはとても重要です。