「からだの脳」を家庭生活で構築することが最重要

脳が未熟な状態で生まれた子どもを、学習を含めて社会で活躍する成熟した人間に発達させるためには、子どもの脳に、発達段階に応じた適切な環境刺激を大人がくり返し与えることが重要です。

乳幼児期はなによりも大脳辺縁系、視床、視床下部、中脳、橋、延髄などからなる「からだの脳」を、五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)の刺激をくり返し与えて育てることが大事です。

なかでももっとも大事なのが、「太陽のリズムに従う」生活をくり返し視覚から刺激として与えることです。これは、ヒトという昼行性動物(太陽が昇っている間に活動をして、太陽が沈むと眠る動物)の脳を育てる上で必須の環境刺激であり、つまり、「大人が意識して、子どもに十分な睡眠時間を取らせる生活」ということになります。

この生活が確立されてはじめて、ヒトは昼間に食欲が起こり食事をして生命を維持し、自律神経を活性化し環境の変化に合わせられる身体機能を保持する脳を獲得していけるのです。これが、乳幼児期から周囲の大人が自覚をもって子どもに与え続けるべきもっとも大切な役割であると言えます。

ですので、私たちの子育て科学アクシスのワークショップ、ペアレンティング・トレーニングでは、まずこの「からだの脳」を家庭生活からしっかりと構築することが最重要であると考えます。

子供の成長にお金の話題が役に立つ

そして、「からだの脳」がしっかり育ったなら、次に知識や情報の宝庫である大脳新皮質、すなわち「おりこうさんの脳」を家庭生活の中でしっかり育てます。

例えば、「家庭にお金が持ち込まれるのは、親が社会の中で働き、その対価として得ている報酬だからである」という知識を、子どもにしっかり身に付けさせなければなりません。そして家庭の経済は、親が稼いでくる収入と、家庭生活を行う上で必要となる経費の支出のバランスを取りつつ回っているのだ、ということも子どもは知らなければならないのです。

お年玉
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※写真はイメージです

家庭の経済状況という情報も逐一子どもにありのままを伝えましょう。皆さんは、家庭でこのことを実践できているでしょうか? 実は私たちが経験する多くの家庭で「子どもにはお金のことを話したくない」「子どもにはお金の苦労をさせたくない」と、こういう話題を避けている傾向があります。

でも、全く逆です。子どもを社会で役に立つ人間に育てたいなら、ぜひこういう話を普段からしっかりしておいてください。