「飲酒量ゼロのほうが健康によい」というデータ

さらにショッキングなのが、2018年8月に世界的に権威のある医学雑誌『Lancet(ランセット)』に掲載された研究結果です。この論文で、健康への悪影響を最小化するなら飲酒量はゼロがいいことが報告されました。

また、2019年に産業医科大学高年齢労働者産業保健研究センター教授の財津將嘉さん(論文発表当時は東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学教室助教)らが日本人を対象に研究した論文「低~中程度の飲酒のがんへの影響」では、飲酒をしなかった人が最もがんの罹患のリスクが低く、飲酒した人のがん全体の罹患リスクは、飲酒量が増えるにつれて上昇すると報告されています。

具体的には、1日純アルコールにして23g(日本酒1合程度)の飲酒を10年間続けることで、お酒をまったく飲まない人よりも、なんらかのがんにかかるリスクが1.05倍上がるというのです。

「たったそれだけ?」と思うかもしれませんが、これは1日23gのアルコールを10年間摂取した場合の数字。23gよりも多く、20年、30年と飲酒を続けたら確実にがんのリスクは上がっていくということを忘れてはいけません。この論文からもわかるように、「酒は百薬の長」はもはや過去のものといえそうです。

アルコールの分解力は性別、体重、年齢で異なる

Q お酒に「強い人」と「弱い人」、何が違う?

A アルコール(より正確にはアセトアルデヒド)の分解力は、性別、体重、年齢によって異なります。主な要因となるアルコールの分解力は遺伝により決まっていて、まったく飲めない人は、訓練しても強くはなりません。

酒に強いかどうかは「アセトアルデヒド」という物質の分解力で決定されるといわれています。アルコールはまず、胃や小腸で吸収され、主に肝臓でアセトアルデヒドに分解されます。アセトアルデヒドはさらに分解され、無害な酢酸になります。

アセトアルデヒドを分解してくれるのはALDH2(アルデヒド脱水素酵素)という酵素で、この酵素の活性が強いかどうかが、お酒の強さに関連しているのです。