肝臓が小さい女性は、男性よりもリスクが高い

ALDH2は、アルコールの分解力の強さによって、「活性型」(強い)、「低活性型」(弱い)、「失活型」(ほとんど分解しない)の3タイプに分類されます。活性型の人はお酒に強く、低活性型の人はお酒に弱い体質です。そして失活型の人は、お酒を飲めない下戸体質なのです。このALDH2の型は、遺伝によって決まっています。

また、お酒の強さは、性別や体重、年齢によっても異なります。女性は男性よりも肝臓が小さいため飲酒の影響を受けやすく、少量のアルコールでも肝臓障害や依存症のリスクが高くなります。

アルコールによるさまざまな影響は、体内の血液量、水分量、肝臓の大きさによって異なります。一般的には体の大きい男性のほうが影響を受けにくい傾向にあります。

さらに、本書の別の項で詳しく述べますが、加齢によってお酒に弱くなります。

「飲んでいるうちに強くなった」はあり得る

「もともとはお酒に弱かったが、飲んでいるうちに強くなった」「前よりも量を飲めるようになった」――お酒好きの間では、そんな声をたまに耳にします。実は私もその1人です。それにはこんな理由があります。

アルコールの分解経路には、アルコール脱水素酵素(ADH1B)とアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)を使って分解する“もともとの経路”と、ミクロゾームエタノール酸化酵素系(MEOSメオス)という酵素群を使って分解する“新たにできる経路”の2種類があります。お酒に強い人は、ALDH2の活性が高いので、ADH1B→ALDH2の経路でどんどんアルコールを分解します。

一方、お酒に弱い人は、ALDH2の活性が弱く、なかなかアルコールを分解することができませんが、飲み続けるうちにもう1つの経路=MEOSの経路を使って分解されるようになります。

このMEOSの経路は、お酒を飲めば飲むほど盛んに使われるようになります。もともとはお酒が弱くても飲み続けると強くなるのはこういうわけなのです。しかしこれは一過性なので、しばらく飲まないでいるとまたもとに戻ります。

ただし、ALDH2が失活型の人は体質的に飲めない人なので、飲んで強くなることはありません。強くなろうと思って無理に飲むと危険なので要注意です。