「負債」は資産になる
この「浪費」と「消費」と「投資」という考え方、実はバランスシートを知っていると、より理解しやすくなるかもしれません。
バランスシートとは「貸借対照表」と呼ばれるもので、企業が、ある時点において自社の財務状況を明らかにするために作成する書類のことです。
一般的に、表の左側に資産を記入し、資産の中でも現金などの「流動資産」、土地や建物などの「固定資産」に分けます。また、右側には負債と純資産を記載し、負債にも同じように「流動負債(未払い金など)」と「固定負債(長期の借入金など)」があります。資産と「負債+純資産」は必ず一致しなければなりません。
このバランスシートですが、なにも企業だけのものではなく、家計にも当てはめることができます。資産と聞くとそれだけで難しく感じてしまう人もいるかもしれませんが、考え方は簡単なので、ぜひ飛ばさずに読んでください。
例えば、家庭の場合、左側の資産のところに記入するのは、流動資産として「現金」「普通預金」「株式」「投資信託」などです。そして、固定資産には「不動産(家)」「自動車」などが入るでしょう。
右側の負債のところは、流動負債として「クレジットカードの未払金」などが入り、固定負債として、「住宅ローン」「自動車ローン」「教育ローン」などが入ります。そして、資産から負債を引いた額が純資産となり、その時点における家計の余力資産になります。
このバランスシートを理解することで何がいいかというと、負債を資産として考えられるようになることです。
先ほど、負債のところに「住宅ローン」や「自動車ローン」が入ると言いましたが、その代わり、資産のところに「不動産」や「自動車」を入れることができます。
この負債が資産になるという考え方が、とても大切なのです。
借金をしてでも「良い物」を購入する人の思考
私は、娘がバイオリンを習っていましたので、バイオリンを例に説明しましょう。
子どもにバイオリンを買ってあげるとき、一つは1000万円のバイオリン、もう一つは20万円のバイオリンがあったとします。
両者の違いは、単に金額や楽器の品質・音色が違うだけではなく、1000万円のものはアンティーク品としての価値もあり、娘が数年使っても、価格が大きく下がることがないもの。一方の20万円のバイオリンは、消耗品として販売されているため、購入した瞬間から価値が下がり、数年もしたら0円になってしまうもの。
バイオリン購入資金として用意していたのは、300万円。
あなただったら、どちらのバイオリンを購入するでしょうか。
1000万円のバイオリンを購入するには、当然、ローンを組むなどして借金をしなければなりません。単純に今の経済状況を考えたら、20万円のものを選ぶしかない。そう考える人は多いと思いますし、それが間違っているとは思いません。でも、負債が資産になると考えたら、選択肢が変わるかもしれません。
1000万円のバイオリンは、アンティーク品としての価値もあるため、700万円の負債を抱えても、1000万円の資産を有したことになります。
それに、資産として保有していれば、数年経って娘がバイオリンを買い替えるとき、あるいはバイオリンが合わず、やめてしまうときなどに売却することができ、700万円の負債を帳消しにすることも可能です。
けれど、20万円のバイオリンは資産にすることができないから、結果として手元に残る資産は280万円だけ。負債を抱えても1000万円の資産を手に入れるか、堅実に280万円が手元に残る方がいいか。さらに、上質の楽器で弾いて上達しコンクールにも出場できる場合と、いまいちの品質でやる気もなくなり途中でやめることになってしまう場合もあり得ます。
もっとも、これはあくまでもわかりやすい例として説明しただけで、バイオリンの価値が絶対に下がらないという保証はないし、ローンの利息なども考えなければいけないのでしょうが、ただ一つ言えることは、負債を資産にすることができるという考え方を持っていた方が、明らかに選択肢が広がるということです。