経営者の仕事は重要な判断の連続といわれる。たとえばエコナ関連製品の売り上げは約200億円。その販売を中止するという決断は、目先の数字だけにとらわれていてはできない。どんな困難な状況にあっても原理原則に則って、物事を適切に判断していくためにはどうすればよいのだろうか。
『自助論』
達成感に溢れた人生を送った有名・無名の数々の人々のエピソード、言葉、自己実現法を描いている。人生を変える 「プラスの習慣」がつまっている。著者は19世紀に活躍したイギリスの医師・作家。 サミュエル・スマイルズ著、竹内均訳/初版2003年/三笠書房刊

判断力を磨くには、読書も含めた経験が大切ではないでしょうか。やはり正しい努力を積み重ねてきたという経験そのものが、自分という存在になるのです。そこに拠り所がないと、困難に立ち向かうことは難しい。

必要な情報の3割しかなくても、進むか退くか決断しなければいけない場合もあります。そういうとき、最後はある意味直感が頼りになるのですが、それはいきなり出てくるものではありません。さまざまな要素や過去の経験を踏まえて考え抜く中で、迷いながらもやっと方向性が見えてくる。しかもそれは、スパッと割り切れるような単純なものではありません。

3代前の社長・丸田芳郎は、「会社は道場だ。自分を鍛える場所なんだ」とよく話していました。今思い返すとたくさん経験を積み、その経験値でさまざまな判断や行動ができる力を養っていく場が会社であると丸田は言っていたのだと思います。

やはり毎日毎日コツコツと続ける努力の積み重ねこそが大事。『自助論』にも「最高の知的素養は1日の仕事から生まれる」「自らの汗と涙で勝ち取った知識ほど強いものはない」と書いてあります。これは「会社は道場だ」という考え方と同時に、長瀬の「天佑は常に道を正して待つべし」に通じる考え方です。

半年間山にこもって勉強しても、その後の日々を安易に過ごしていたら何にもなりません。いきなりスーパーショットを打つ必要はない。それよりも長い期間コツコツと努力を積み上げることによってこそ、大きな成果も生まれるのだと思います。

私にとって『自助論』は、本当に困ったときに原点に立ち戻り、態勢を立て直して前進するための書になっています。

尾崎元規氏厳選!「役職別」読むべき本

■部課長にお勧めの本

『経営者の条件』P・F・ドラッカー著、ダイヤモンド社

経営学者ドラッカーが、経営者のみならず、1人のビジネスマンとしてよき仕事を成し遂げるためにはどうすべきかを記した書。

『組織戦略の考え方-企業経営の健全性のために』沼上 幹著、ちくま新書

組織を預かる立場になった人に、組織について考える入門書。

『坂の上の雲』司馬遼太郎著、文春文庫

■若手、新入社員にお勧めの本

『ものづくり経営学-製造業を超える生産思想』藤本隆宏著、光文社新書

技術経営が抱える問題点に関する研究成果がまとめられている。

『V字回復の経営』三枝 匡著、日経ビジネス人文庫

『フラット化する世界』トーマス・フリードマン著、日経経済新聞出版社

※すべて雑誌掲載当時

(宮内 健=構成 市木朋久=撮影)
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