求められることに応えるうちに、自分が薄っぺらくなっていく

できない部分を明らかにするのはかなり勇気がいりましたが、おかげで自分を変えるきっかけをくれた上司に出会えたわけですから、やっぱり隠さないというのは大事ですね。その上司の下で働くようになってからは気分的にも解放され、マネジメント職をめざすのではなく、アナリストとしての専門性を高めるほうへ自分を振り切ることができました。

馬渕磨理子さん
撮影=プレジデントオンライン編集部

とはいえ、その後も同じ壁には何度もぶつかっています。専門家としてコメントを求められるようになってからも、私は周囲が寄せてくれる期待に次々と応えようとしていました。そのうち、自分のアウトプットがどんどん浅く薄っぺらいものになっていくように感じて、不安になり始めたのです。

こうした質の低下には周りの人も気づくでしょうから、何かコメントするたびに自分の価値が下がる気がして、やがて耐えられなくなりました。そこで、思い切って周囲の人に「しっかりインプットの時間をとって、自分なりの意見を言えるようになりたい」と伝えました。

すると、インプットしたり専門性を高めたりするうえで貴重なアドバイスをたくさんいただけるようになったのです。これが私にとって成長の大きな糧になりました。

誰だって、「何でもできます」という顔をしている人にはわざわざ助言しないですよね。その点、弱みや不安を隠すことなくさらけ出せば、アドバイスもいただけるしお付き合いも深く長くなることが多い。本当にいいことばかりだなと思います。

求められるイメージを演じない

10年ほど前は、女性アナリストに対して強い女性像を求める人が多くいました。上からビシッとものを言う、かっこいい女性といったイメージですね。でも、私はそうしたタイプではないですし、投資の解説でも講演でも「聞いている皆様が主役」というスタンスで続けてきました。本当の自分を隠すことで自分を苦しめてきた経緯があるので、たとえ求められているのが強い女性でも、自分は自分らしくいようと決めていたからです。

もしかしたら、そのせいで離れていった人や失った仕事もあるかもしれません。それでも、もう隠すことはしたくありません。今では、仕事だけでなく生きるうえでも、求められているイメージを演じないように心がけています。