本当に「先生は不人気職業」になったのか
「教員不足問題」が大きな話題になっている。
確かに筆者(小学校教員)の周辺も含め、教員の数が不足しているのは否めない。ただそれを踏まえ、教員=不人気という言説をよく耳にするが、そういうわけではない。
文部科学省の公立学校教員採用試験に関するデータで採用試験の倍率をチェックしてみよう。直近までを20年ごとに見ると、1979年3.2倍→2000年12.5倍→2022年2.5倍となっている。
2000年が12.5倍と倍率が異常なほどに高いのは、就職氷河期で採用数が極端に少ない年だったことが大きい。倍率が極端に高まる主な理由は、採用人数が少ないタイミングである。
高倍率が次年度以降も保つ傾向もあるが、それは不合格者が予備軍(講師)として次年度も受験することが多いからである。その結果、高倍率を保てる。
逆に、倍率が落ちるのは、前年度に大量採用して受験予備軍(講師)が減った場合だ。この場合、次年もさらに倍率が落ちる。こちらはボディブローのように、長期にわたりじわじわとその効果が大きくなっていく。理論上、年を重ねるにつれてどんどん有力な受験予備軍である講師人員が減っていくからである。
教員の人気度は倍率だけで見ることはできない。さらに大きな母数である「人口全体」に対して占める受験者層の割合の問題が絡むからである。
今度は、総務省統計局のもつ別のデータと照らし合わせて、新成人の人口推移を見てみる。
新成人の数は、その後で採用試験を受けるであろう人数と相関があるためである。
2000年 164万人
2022年 120万人
1979年と2000年は同じ160万人台だが、実は教員採用試験の受験者数は2万7000人減っている。割合で言うと、成人人口として1%程度の増加に対し、受験者数は何と40%近く減った。どんなに倍率が高かろうが、これはさすがに「人気低下」といえるかもしれない。
「かもしれない」というのは、職業の選択肢が増えれば、当然、異なる職種に進む人も多いからだ。また、採用数が極端に少ないと見れば、高倍率の教職を避ける傾向も出てくる。