世界的にも類をみないくらいの長期間にわたる自粛
何しろ、日本の新型コロナ対策では、世界的にも類をみないくらい長期間にわたり、自粛を強いている。様々なイベントの中止や延期が相次ぎ、高齢者向けの介護予防教室、地域の集まり、一時は要介護の人のデイサービスやデイリハビリの一部まで自粛によって休止された。元気な高齢者のカラオケは悪モノ扱いされ、日本の感染症分科会のメンバーや厚生労働省、日本医師会長までが、感染者が増えると「気の緩み」や「人流の増加」を指摘し、自粛を強要した。しかも、もともと法的に義務化されているわけでもないマスクでさえ、政府に外す日を決めてもらわないと外せず、2023年に入って以降もほとんどの人がマスクを着けていた国民性である。まじめな高齢者は、感染を怖がって専門家の意見に従い、健康状態を悪化させてしまったわけだ。
一人暮らしの高齢者はフレイルになるリスクが高まっていた
筑波大学の研究チームは、日本の都市部に住む65~84歳の高齢者937人の新型コロナパンデミックの影響をインターネット調査した結果を2021年4月に、『栄養・健康とエージング誌(The journal of nutrition, health & aging)』のオンライン版で報告した。それによると、1回目の緊急事態宣言が出された2020年4月、第2波の2020年8月、2回目の緊急事態宣言下の2021年1月で、高齢者の身体活動時間は新型コロナパンデミック前と比べてそれぞれ33.3%、28.3%、40.0%も減少した。特に、一人暮らしの高齢者は、家族と暮らし社会的に活発な人に比べて活動量が少なく、フレイルになるリスクが高まったと報告している。フレイルとは、要介護になる一歩手前の状態だ。
緊急事態宣言などによる行動規制は、最初のうちは一定程度感染拡大を防ぐ効果はあったのかもしれない。しかし、過度な行動制限や自粛は、高齢者の命を危険にさらす諸刃の剣になり得る。自粛によって要介護に近い状態になるコロナフレイルの危険性も指摘されていたのだから、世界で最も高齢化が進む日本ならではの健康悪化予防策をもっと早く取るべきだった。