ジャニーズ事務所が非上場の個人会社なのが問題

そもそも今回の事例で会社はどこまで責任を負うべきなのか。犯罪行為をしたのは元社長のジャニー喜多川氏で、すでに亡くなっている。おそらく十倉氏は、今のジャニーズ事務所やタレントには重い責任はない、と思っているのだろう。一方で、喜多川氏の行為を放置した事務所の「体質」は今も続いているというのが新浪氏の立場。タレントは他の事務所に移籍すれば仕事ができるので、ジャニーズ事務所に温情をかける必要はないということではないか。

確かに経団連企業のような上場する大企業ならば、経営者が引責辞任すれば一応のミソギは済むことになる。だが問題は、ジャニーズ事務所が非上場の個人会社だということだ。前述の通り、株主はひとり、藤島氏だけだ。第三者の株主はいないので、利益が上がればすべて藤島氏のものになる。配当として個人財産に変えなくても、保有する株式の価値が上がれば個人の資産は増える。

金のなる木を両手で守る
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もちろん、ジャニーズ事務所はジャニー喜多川氏が一代で育て上げた会社だが、それを姪である藤島氏が相続した段階で、資産だけでなく、負債も相続している。ジャニー喜多川氏が行った加害行為の賠償責任も藤島氏個人が負っていると考えるべきだ。もちろん、見過ごした会社にも責任はあるが、主体はあくまでジャニー喜多川氏個人。その負債は藤島氏個人が相続していると考えるべきだ。

藤島氏が株式を持ち続ければジリ貧になる

100%株式を持っているので、会社が賠償しても藤島氏個人が賠償しても同じだという考え方もできるが、グループ売上高が1000億円規模だと言われるジャニーズ事務所には社会的な存在としての責任がある。所属タレントのために、会社を存続させるという選択肢はもちろんある。

その際、焦点になるのは、藤島氏の保有株である。株式を持ち続けていたら藤島氏個人の会社だから、タレントは藤島氏の利益のために働いていることになる。藤島氏が賠償すべきものを所属タレントが負うのと同じだ。タレントに罪はない、というのであれば、藤島氏は保有株を手放し、藤島氏とは関係のない会社に変えることが重要だ。その際、保有株を売却した資金を賠償金に充てれば良く、会社は独立した存在として生き続けることになる。そうなればさすがに加害者の名前を冠した社名は使わないだろう。

一方で、藤島氏が株式を保有し続けた場合はどうなるか。「今までと変わらない」と見られた会社に所属しているタレントの仕事は減り続けてジリ貧になっていくだろう。たまらず所属タレントの移籍も増えていくに違いない。売れっ子タレントはジャニーズ事務所に所属していなければ仕事が来ないわけではないからだ。さらに、不祥事を長年放置した会社として、取引先も潮が引くように離れていくに違いない。