シナリオ2:ジャニーズ事務所が再生処理される未来
「芸能事務所として生き残るためにはどうしたらいいか?」
今起きている問題についてこのように中心論点を設定すると、これからお話しするようなシナリオへと未来が進んでいく可能性があります。
芸能事務所として生き残るためには、社会にジャニーズ事務所が変わったことを認められる必要があります。そのためにはふたつの即効薬があります。事務所の名前を変更し、ジュリー氏が役員を退くことです。ところがこれをやってしまうと、ほとんどの人が予測していないおかしな形でのジャニーズ解体劇が始まってしまいます。
最初の引き金はジュリー氏の相続税問題から始まります。これはすでに報道されていることですが、ジャニー氏とメリー氏が亡くなった段階で本来は莫大な相続税が発生するはずでしたが、それを国の事業承継税制の特例措置申請でジュリー氏は免除されているというのが現在の状況です。
ジャニーズ事務所のような非公開会社の株価は専門的には同じ業種の他の上場企業の株価と比較することが一般的です。芸能事務所の場合は具体的には「エイベックス」と「アミューズ」と比較することになります。
ジュリー氏の手元にお金はほとんど残らない
週刊文春(2023年9月28日号)では、専門家が算出した数字として納税額は860億円にのぼるとされています。この数字、ジャニーズ事務所は「違います」と回答しています。国税庁と話し合った具体額は860億円とは違う金額だという意味なのでしょう。ここでは860億円という数字を前提に話を続けます。
問題はジュリー氏が代表取締役を退くと事業承継税制の特例措置要件から外れて相続税額に金利を加えた巨額の納税義務が発生するのです。税金は払わないとどんどん金利が加わるうえに、自己破産もできません。そのためジュリー氏は株を手放さざるをえなくなります。
相続税の最高税率55%から逆算して国税のジャニーズ事務所株の評価額は1600億円ぐらいでしょうか。しかし現在の窮地を考えるとそのままの価格では売れないでしょう。うまくいって1200億円ぐらいで売れたら御の字です。ちなみにその場合、元が1000万円の株の売却益ですから株式売買でも240億円の税金がかかります。納税額は単純合計の1100億円に加えて延滞分の金利も100億円を超えるはずです。手元にお金はほとんど残らない形でジュリー氏は表舞台から退場することとなります。