当事者よりも関係者が潤うシナリオになる

以上がシナリオ2になります。これはわかりやすい問題解決シナリオです。創業者一族が退出し、補償も終わり、経営陣や株主は一新されて、元のような華やかな芸能事務所が存続するケースです。

ただ収支をまとめてみると、ちょっとおかしな結果になります。

■ジュリー氏 ほぼ経済破たん
■被害者 1000人合計で30億円の金銭補償のみ
■所属タレント 株主のために巨額のお金を稼ぐことを強いられる

■ファンド 800億円の利益計上
■メディアとスポンサー 毎年250億円の配当
■国 相続税と株の売却だけで1100億円の税収

つまり当事者よりも、周囲の関係者が潤うというシナリオになるわけです。国もメディアもスポンサーも金融機関も、ジャニーズ事務所を叩けば叩くほどこの先儲かるシナリオにつながるというのでは、そこに大義はあるのか? という疑問がわいてきます。

秤のうえに積み上げたコイン
写真=iStock.com/sommart
※写真はイメージです

そこでもうひとつだけ念のために別のシナリオを確認してみましょう。

シナリオ3 ジュリー氏が代表取締役で残る茨の道

シナリオ2では最初の論点設定を「芸能事務所として生き残るためにはどうしたらいいか?」と置いた結果、おかしな方向に物事が流れてしまいました。ここでは別の論点を設定してみましょう。

「所属タレントと被害者の方々、そしてファンにとってよりよい未来とは何だろうか?」

と問題を再設定してみましょう。シナリオ1のような消滅でも、シナリオ2のような国とメディアとスポンサーが潤う未来でもない、第3の別の未来が誕生する可能性はあるのでしょうか。

この未来を模索するために経営陣は次の決定をすると想定してみます。

1 ジャニーズ事務所の名称は変更し、故ジャニー喜多川氏からの訣別を表明する


2 ジュリー氏は代表取締役に留まるがあくまで事業承継税制を活用するだけの存在とする

この決定で国に払う1100億円のキャッシュが節約できます。しかしただ税金の支払いを逃れるのであれば世論はそれを許さないことでしょう。そこで取締役会メンバーはジュリー氏に対して、別の形での償いを強く求める必要があります。たとえばこのような条件です。