取引を再開するためには何が必要か

取引を元通りにするためにはあと何が必要だとスポンサー企業は考えるでしょうか? 記者会見で事務所が表明した3つの約束に加えて、ジャニーズ事務所の名称を変えることと、創業者一族であるジュリー氏に経営から離れてもらうことが必要だという主張には一定の合理性があります。社会悪を引き起こした企業と取引を再開するには、関係した人が処分されること、被害が償われること、再発が防止されること、そして経営陣が新しい人たちと入れ替わることが求められるからです。

この論点に関して冒頭に述べたようにすでに何らかの意思決定が行われた様子です。ただ心配なのは現時点のジャニーズ事務所の経営陣はこういったことに関しては素人の集まりです。「もうこうする以外、選択肢はないですよ」という周囲の強いアドバイスから間違った意思決定をしているかもしれません。

これから起きる可能性があることを、3つのわかりやすいシナリオで解説してみたいと思います。

シナリオ1:ジャニーズ事務所が自然消滅する未来

このままの延長線上で起きる可能性が一番高いのはこの未来です。大半のスポンサーが降り、それに押されメディア各局もジャニーズタレントを起用しなくなる。それが一時的な現象かと思い、大きな改革を決断できなかった場合です。結果、メディアで活動できない状況が長期化してしまったらどうなるでしょう。

所属する有力タレントたちは少しずつ独立するようになります。ひとり減り、ふたり減り、やがて誰もいなくなったとしたらどうでしょうか。ひょっとしたら被害者の救済にすら手がまわらないうちにジャニーズ事務所が消滅してしまったとしたら、いったい誰が得をするのでしょうか?

スライスされたピースが減っていき、しまいには見えなくなってしまいそうな男性のシルエット
写真=iStock.com/piranka
※写真はイメージです

このシナリオはタレントにとってもファンにとっても被害者にとっても悪いシナリオです。そうならないためには次の2つのシナリオのように、経営陣が踏み込んだ判断をすることが求められるのではないでしょうか。