資金が潤沢にあればさまざまな救済の形が可能になる

3 事務所は30億円ではなく1000億円を被害者救済資金として拠出することを表明する。その原資はジュリー氏の私財から捻出する


4 ジュリー氏は事業承継税制の期限の後に代表取締役から退き、5~10年ほどの時間をかけて株式を事務所の所属タレントを中心とした従業員グループに移管していく
5 事務所は実質的に株式会社からパートナーシップの経営体へと移行し、所属タレントたちが株式を持ち、所属タレントそれぞれの貢献に応じて利益が配分される経営形態へと移行する

前回の記事で書いたように被害者への償いは対話から始めるべきです。金ではないというのはわかりきった理屈です。しかし資金が潤沢にあればさまざまな形の救済が可能です。単純に被害者ひとりひとりに1億円を支払っても、税金で半分持っていかれるだけでしょう。その解決でいいという人もいるかもしれませんが、ひとり1億円で再スタートの手助けをする方法は他にたくさんのやり方が考えられます。

たとえば希望する被害者は再雇用する。そしてリスキリングに投資しプロデュースにお金を投じてタレントや俳優、歌手として再デビューさせていく未来も描けます。またTOKIOが福島でやっているように、さまざまな地域や場所でアンバサダーとして活動を始める未来も考えられます。お金では心の問題は解決しませんが、それでもお金は使い方によっては被害者の未来のオプションを広げるための一助にはなるものです。

音楽コンサートで熱狂する客席
写真=iStock.com/josepmarti
※写真はイメージです

「誰も得をしない方向」に日本社会の空気は流れやすい

ただこのシナリオの解決策についてはメディアとスポンサーが納得するかどうかという問題が壁となって立ちはだかるでしょう。

そこで日商の会頭が言うようにメディアやスポンサーが被害者なのか一部加担者なのかも第三者委員会を使って徹底的に調べたほうがいいといった意見も出てくるかもしれません。局のOBや宣伝部のOBにヒアリングをかけて、35年前に最初の告発があった以降、どれだけの規模でこの事実が知られていたのか。そして事実を知りながらどれだけの人たちが儲けを優先してきたのかはっきりさせないと、グローバル企業はルール上身動きがとれないと言い出すかもしれません。

とはいえ私はそこまで野暮なことをすることなく、巨額な賠償基金の提示と、ジュリー氏が5年後には経営の一線から身を引くという約束と、ジャニーズ事務所の名称をなくすという新たな3点セットで、グローバルスポンサーには矛を収めてほしいと願います。これ以上調べて、これ以上メディアやスポンサーから他にもいろいろな膿が出てきたら、ファンは誰も芸能界に魅力を感じなくなるかもしれませんから。

日本社会の空気というものは怪物で、誰も得をしない方向にわたしたちをついつい誘いがちです。今、ジャニーズ事務所を叩くのが楽しくて仕方のない人も多いのだとは思いますが、誰のための未来なのかという一点を間違うと、ただただジャニーズ事務所が消滅したり、解体処分されるという救いのない未来が訪れるかもしれません。10月2日の記者会見で、ジャニーズ事務所が取り返しのつかない意思決定を発表しなければいいと私は願っています。

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